カート・ヴォネガットの死 [追悼]
カート・ヴォネガットの訃報に接する。享年84。
最初この記事を見たとき、誰が亡くなったのか一瞬わからなんだ。そうかて「ボネガット」やもんなあ。新聞の表記の決まりごとがあるというのはわかるけれど、どの出版社でも「ヴォネガット」と表記しているわけやから、これは固有名詞でしょう。例えば「渡邊」を「渡辺」と表記するようなもんですね。こういう場合は通りのよい方の表記を使用していただきたかった。
いやそんなことを書きたいんやなくてやね。カート・ヴォネガットJr.(の方が私にはしっくりくる)って、もうそんな年やったんや。高校時代、SF小説の面白さを知り始めたころに読んだ「猫のゆりかご」なんて、たぶん今読んだらまた違う感想を抱くんやろうけれど、なんとも不思議な影があって、活字によるスラップスティックとはこういうものなんかなあなんて、やはり当時むさぼるように読んでいた筒井康隆さんのスラップスティックSFと日米比較みたいなことをしてみたりした(生意気な高校生や)のを今でも覚えている。もっとも、それは翻訳した伊藤典夫さんや浅倉久志さんの力も大きかったわけですけれどね。
もっとも、今回の訃報に見られるように、「Jr.」がとれてからはSFの人やなく文学の人に分類されるようになってしもうて、なんとなく読まなくなってしもうたんで、私にはヴォネガットについて語れるだけの資格はないかもしれんけれど。ただ、私の読書傾向をSFにぐっと押し出す作家の一人やったという意味では、私の人生を変えた作家の一人やったということになるやろう。
それにしても、日米スラップスティックSF比較ということで考えたら、結局筒井さんもヴォネガットも文学的にならざるを得なんだということになるのか。実験小説を究めると、いくぶん大衆的な色合いの残るSFの範疇からはみ出してしまうということになるのかな。
謹んで哀悼の意を表します。
4月15日(日)はたちよみの会です。ご参加お待ちしています。
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