阿久悠の死 [追悼]
作詞家の阿久悠さんの訃報に接する。享年70。死因は尿管ガン。
職人であり、作家やった。物語のワンシーンを切り取ったような歌があるかと思えば(「真っ赤なスカーフ」「津軽海峡冬景色」など)、思いを相手に訴えるものがあり(「ねらいうち」「北の宿から」など)、状況の説明をうまくまとめあげたものもある(「ウルトラマンタロウ」「君よ八月に熱くなれ」など)。壮大な内容の歌もあれば(「あの鐘を鳴らすのはあなた」など)、コミカルで軽いものも書いた(「透明人間」「SOS」など)。
ところが、書いてない歌があるんですな。大の阪神タイガースファンやのに、タイガースの応援歌は(私の記憶する限りでは)残してへん。これは私の憶測やけれど、「六甲颪」という名曲があるのに、その加えて応援歌を作る必要性をまったく感じてなんだんやないか。依頼があれば西武ライオンズの球団歌も作詞するのに、「球臣蔵」なるタイガース小説まで書いているのに、応援歌は書いてへんのやなあ。
良くも悪くも戦後高度経済成長期以降の日本の空気を象徴する作詞家やったと思う。そして、バブルの時期にそのポジションを秋元康に奪われてしもうたんやないかと思う。それはある意味、日本にとっては不幸なことやったのかもしれん。
吉田正さんよりも国民栄誉賞にふさわしい作詞家やったと思うんやけれど、まあしんぞう首相は今そういう賞を贈るとかいうような状況やないもんなあ。
謹んで哀悼の意を表します。
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