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市川崑の死 [追悼]

 映画監督の市川崑さんの訃報に接する。死因は肺炎。享年92。
 つい最近、衛星放送で市川監督と石坂浩二さんのコンビで撮られた「犬神家の一族」「悪魔の手毬唄」「獄門島」「女王蜂」「病院坂の首縊りの家」を連日ぶっ続けで見たところやから、監督の映像美については印象が深い。
 いろんなところで代表作については語られるやろうから、私はなぜか誰もあまり語らない「火の鳥」について書いておこう。これは手塚治虫原作マンガ「火の鳥・黎明編」の実写映画化で、手塚プロ製作のアニメとの合成などが話題になったもの。なんでかしらんけれど、DVD化されてへん。またミシェル・ルグラン作曲の主題曲や深町純作曲のサウンドトラックもCD化されてへん。
 例えば、編集のせいでアニメ・パートの火の鳥が心臓に射られた矢を足で引き抜くというシーンがずたずたになっていたりということで手塚ファンやアニメファンから当時叩かれていたという記憶がある。私が高校生の頃、京都で行われ手塚さんも登場した「アニメフェスティバル」かなんかの企画で、編集前のフィルムを通しで上映してくれたのを見た。確かに完成品では間に尾美としのり(ナギ役)の顔が細かくカットインされていてせっかくの力作が台無しになっている。そやからというて現在まったく入手できないというのはちょっと不思議やな。市川監督らしい古代の美にこだわった「火の鳥」やったことは確かですわ。衣装も凝っていたし、古代の雰囲気を出すためにあれこれと工夫してあったし。そして原作のイメージを極力壊さないようにという配慮もされていたと思う。
 キャストは若山富三郎、加藤武、高峰三枝子、伴淳三郎、大原麗子、草笛光子、大滝秀治、ピーター、仲代達矢といった横溝正史シリーズでもおなじみの俳優さんを中心にした豪華なもの。今思うと決して失敗作やなかった。
 話題作からこういう「忘れられた作品」も含めて、ほんまに独特の美学を常に感じさせる監督やった。テレビで見た時代劇で、衣擦れの音に非常にこだわっていてそれが実に効果的やった、なんてことも思い出したぞ。こういう監督はそう出てくるもんやなかろう。
 謹んで哀悼の意を表します。

17日(日)は「たちよみの会」例会です。多数のご参加をお待ちしています。


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