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春にして君を離れ [読書全般]

 朝、少し温いかなと感じたのでダウンジャケットやなくジャンパーにマフラーといういでたちで出勤。これは計算違いで意外と冷えていたらしくしきりに尿意。仕事部屋もストーブをがんがんたいてたけれど、なかなか温もらなんだ。
 今日は自分の持ち授業は先々週で終わっているので、ひたすら仕事部屋にこもり成績つけの作業。積み残していたプリントの採点を1日かけてすべて終える。明日、明後日でエクセルにテータを入力し、計算式をぶちこんでなんとか評価を出せるめどがついた。やれやれ。目が疲れてまぶたがひくひく動く。定時に退散。
 帰宅後、妻とアニメ「GO GO アトム」などを見て過ごす。ずっとへたっておりました。明日は授業のつまっている火曜日。なかなかきつい毎日です。
 アガサ・クリスティー/中村妙子・訳「春にして君を離れ」(ハヤカワ・クリスティー文庫)読了。クリスティーが別名義で書いたノン・ミステリ。ほんまはこういうものが書きたい人やったんやないかという気がする。クリスティーのファンの方には失礼かもしれんけれど、何冊か読んだミステリの代表作よりもこちらの方が面白かった。もっとも別名義のまま正体を明かしてなんだら、邦訳はなかったかもしれんなあ。模範的な英国婦人であると自認するジョーンは、結婚した娘が住むバグダッドへ行く。娘が倒れたという連絡があり、急ぎ旅に出たのですね。で、イギリスに帰国する途中で砂漠の小さな町で悪天候の影響で列車が止まってしまい、そこに何泊かするはめに。帰国の途中で出会った女学校時代の友人からかけられた言葉が気にかかり、運行再開を待つ間、彼女は自分がそれまでよしとしていたことがすべて自己満足でしかなかったんやないかと疑いを持ち始め、夫の態度や子どもたちとの関係にすべて疑問を持ち始める。そして彼女が出した結論は……という展開。ずっと主人公の回想で話は進行していくんやけれど、最初は自分ほど素晴らしい良妻賢母はいないと自認していたのが、いつまでたっても同じ場所に留め置かれることで少しずつその欺瞞がはがされていく過程が、読んでいて胸がつまるよう。どんな人間にもある自己正当化が、彼女の場合はなはだしいのですね。そして、自分が実はとても勝手で見栄っ張りな人間やということに気がついていく描写がなんともいえずリアルに迫ってくる。そして彼女の夫もまた優柔不断というかどうしようもない男なんやけれど、彼女はそこには気付かなんだりするところが痛々しい。それなのに、読まずにはいられんおもしろさがある。主人公の人物造形がしっかりしているのと、自問自答で物語が展開されるあたりがキモになっている。読んでいて楽しい本ではないし、読後もなんか後味が悪い。そうやからこそ本書は優れているといえる。ミステリよりもこういう心理小説みたいなものを書きたかったんやろうなと思う所以であります。

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