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方壺園 [読書全般]

 朝から冷えこむ。ダウンを着こんで出勤。ただ、入試出願受け付けは普通の上着にネクタイというスタイルなんで、なるべくヒーターの近くにいるようにする。午前中の4時間、ほとんど出願しにくる中学生はいてへん。いつも2日目はこんなもんやけれどね。
 土日と外出して疲れが取り切れてへんから、ただ待っているだけやと眠くなる。そんな時に限って出願にきたりするから油断でけん。
 午後からは疲れと眠気が襲ってきて、事務作業を低速モードでこなし、定時に退散。
 帰宅後はのびておりました。夕食後、妻とアニメを見たりして過ごす。今日は風呂にゆっくりつかって血行を良くし、早目に寝ることにしましょう。
 陳舜臣/日下三蔵・編「方壺園」(ちくま文庫)読了。作者のミステリ短編集「方壺園」に収録されていた6編と、「紅蓮亭の狂女」収録の3編を合わせた新編集の短編集。舞台は多くが中国。表題作は唐末。あとは清末などが舞台。現代日本を舞台にした「梨の花」もトリックには倭寇関連の文献が関係している。唯一「獣心図」のみインドのムガール王朝が舞台で異彩を放つ。いずれも作者の得意な中国史に密室殺人などの本格ミステリを組み合わせ、独読な味を出している。そのトリックや謎の解明などはさすが乱歩賞作家。その時代の中国やないと成立せん動機もあったりするあたりの仕掛けもうまい。華僑社会の人間関係、宮廷ならではの後継者争いなど、歴史的背景に深い造詣がないと書かれへんものばかり。しかも謎ときには決まった名探偵があたるわけやなく、関係者の一人が真相を解明していき、時には犯人の罪を許す場面もある。その情のかけ方が時代背景とマッチしていたりするのですね。こういうミステリを書ける人はそうはいてへんのやないかな。作者の著書では歴史小説がまだ生きていたりするけれど、ミステリのほとんどが絶版になっているだけに、本書の復刊は嬉しい限り。私は乱歩賞作品「枯草の根」(講談社文庫)など何冊か作者のミステリは読んでいたので、ミステリ作品が軒並み絶版なのを残念に思うていた。中国史にくわしくなくても、純粋にミステリ小説として楽しめるし、中国史を少しでもかじったことがあればより深く楽しめる。歴史を俯瞰する時の透徹した視点と、歴史の波の中でもがくように生きる人間たちの営みのバランスが絶妙なんでありますよ。

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