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鉄の門 [読書全般]

 明日から入試。今日の午前中は校舎まわりの清掃や、願書等の整理など明日に向けての準備を徹底して行う。午後からは私は空き時間となったので、ネットで資料集めをしたり来年度への役職引継ぎの打ち合わせをしたり。ひととおり用事が終わるとほっとしてしばし休憩。参考書や人権関係の冊子に目を通しながらお菓子をつまむ。定時に退出。
 帰宅後は読書を少し。明日は通常よりも30分くらい早い営業開始なんで、早目にこの日記も書いてしまい、早めに就寝せねば。
 マーガレット・ミラー/宮脇裕子・訳「鉄の門」(創元推理文庫)読了。以前ハヤカワミステリ文庫で出ていたものが版元を変えての新訳版。旧訳じたい読んでへんから私には関係ないけどね。心理ミステリを得意とした作者の初期の長編ということで、かの乱歩先生が「心理的純探偵小説の曙光」と感嘆したと帯にはある。医師の後妻である主人公は結婚後どれだけたっても夫の妹や夫の死別した前妻(若き日からの親友でもある)の残した娘たちとの関係がうまくいかない。それでも娘の結婚を機に夫と二人きりの生活に近づいていくことに希望を見出している。ところが娘が婚約者をつれて来たあと、謎の男が配達してきた小箱をあけ、それから失踪してしまう。発見された時には精神的に変調をきたし、精神病院に入院する。すると彼女の同室の患者が変死し、彼女の精神はますます不安定となり、さらに彼女を追いつめるような手紙が届き……。
 小箱に入っていたものがなんで主人公を狂気に追いこむことになったのか。彼女に関係した人々の死は何を意味しているのか。サンズ警部の手元に送られてきた一冊の日記によって真相は明らかになるけれど、いやなんともやり切れん話であります。ミステリとしての面白さはあるんやけれど、それ以上に主人公とその周辺の人物の軋轢やら解明された真相やらは、重く苦しい。人の欲望、怨恨、嫉妬などがからみあって悲劇が増幅される。主人公の家族とは何の関係もない人物まで巻き添えを食らうとなると、やり切れん思いがする。つまり、それだけ誰もが持つ心の闇の部分を大きく引き伸ばして読ませるのがうまいということ。タイトルの「鉄の門」は主人公が入院する病院の門のこと。舞台は1940年代末期ということで、精神病患者はいわば隔離状態におかれている。それを象徴するのが「鉄の門」というわけです。パズラーではないけれど、明らかになる真相を最後までうまく隠しおおせる腕はなかなかのもの。もう少しこの作家の作品を読んでみたくなった。

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