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小林泰三の死 [追悼]

 今でも信じられへんし、信じたくないし、昨日の夜に受けたショックがまだ残っているしで、たぶん冷静に書くということがでけへんのやないかと思いながら、この項をどのように書くか、一日中考えていた。
 作家の小林泰三さんの訃報に接する。享年58。癌で闘病中やったと、初めて知った。
 同い年で、しかもかつてはSFのイベントでごいっしょした時などしょっちゅう親しく接してきた人の訃報を昨晩高井信さんのブログで知った時、目を疑うた。同姓同名の方がいてはる(「かに道楽」の人とか。ニュースでテロップを見てびっくりしたものです)から。でも、高井さんが「かに道楽」の社員さんの訃報をアップするわけないやんな。
 で、すぐに検索をかけたら、早川書房のサイトにヒットした。嘘やなかった。ほんまやった。私のすぐ後ろでテレビニュースを見ていた妻に、「小林泰三さん、死んだって」と言うと、妻も驚いた。私と妻は、よく思い出話をする時に小林さんのことを話題にしていたものですからね。妻もSFのイベントで小林さんとお話をしたりしていたのです。
 この日記にもつい最近まで時折コメントをつけてくれたりしてくれてはったし、実際は10年くらい会うてなんだけれど、この日記を読んでくれてはると意識しながら書いていた。
 30代から40代にかけて、SFのイベントではよくごいっしょさせてもろうた。その時々の思い出をすべて書いていたんではかなりの時数になってしまう。おいおい触れていこうと思う。
 あれはまだ小林さんもデビューしてそれほどたってへんころやったなあ。津原泰水さんの「妖都」という作品のあらすじを抱腹絶倒な物語のように語る人が、京都SFフェスティバルの合宿にあらわれた。それが小林さんやった。そこにいっしょにいたのは、牧野修さん、田中啓文さん、冬樹蛉さんといった面々で、小林さん、牧野さん、田中さんのやりとりがまた絶妙な間でその場にいたものは大爆笑。その人があの「玩具修理者」の作者やとは誰が思うたやろうか。冬樹さんはすぐにご自分のウェブ日記で「漫画トリオ」と命名した(むろん、横山ノック・フック・パンチのトリオのことを踏まえての命名)。後に田中哲弥さんを加えた「漫画カルテット」と呼ばれるようになる。
 あのころは毎年のように今日フェスの合宿で、SF大会で顔を合わせていたものです。
 小林さんは私のことを「『SFマガジン』という歴史ある専門誌で書評を担当している書評家」と呼んでくれはった。たとえ私の担当が架空戦記や伝奇アクションやったとしても。やがて私は「開店休業中の、本をほとんど読まない書評家」になってしもうた。それでも、小林さんは最新刊までずっと新刊が出るたびに本を贈ってくれはった。私のことを書評家としてずっと認めてくれたはったんやと思いたい。それが嬉しくてたまらなんだ。
 同い年ですよ。もし会社勤めを続けてはったとしても、まだ定年退職まで間がある歳ですよ。「因業探偵」の続きはどうなるんよ。徳さんもどっかに行ってしもうたんかよ。アリス、クララ、ティンカー・ベルときて、次は次は誰を殺すつもりやったんよ。
 書きたいことをみなさんにも伝えたいことはまだまだあるけれど、字数が増えてきた。この続きはまたいつか、折に触れて書くことになると思う。
 知人というほど離れてはいず、友というほど近くはなく、ほどよい距離間がよかったのかもしれん。
 ロジカルで、邪悪で、グロテスクで、リリカルな小説を数多く残してくれた小林さん。まだあなたの贈ってくれた本を何冊か読み残してます。辛いけれど、少しずつ読んでいって、この日記で紹介しますね。それが私にできるただ一つの供養やないかと思う。
 そやけどなあ、早すぎるぞ、小林さん。私はこれからまた書き始めるつもりやのに。
 謹んで哀悼の意を表します。
 明日になったら小林さん本人のコメントが付いていそうな気がひょっくりとしてしまう。そんなはずないんやけれどね。

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