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写楽まぼろし [読書全般]

 今日も午前中はテレビ漬け。昨日までの深夜アニメをせっせと見て、日曜朝の「仮面ライダーガヴ」「ブンブンジャー」なども見てから昼食。食後は午睡。夕刻起きて読書の続き。社説のダウンロードなどをしてから、夕食。妻はなんとか元気を取り戻し、昼前には買い物に行き、夕食の支度もしてくれた。急に寒くなったんで、風邪でもひいたかな。風呂に入っている時に急死した中山美穂さんの例もあるから、実は気が気やなかった。
 夕食後、ひたすら読書。明日から採点三昧になるから、面白い本は読めるときに一気に読んでしまわんと。
 杉本章子「写楽まぼろし 蔦屋重三郎と東洲斎写楽」(朝日文庫)読了。タイトルには「写楽」とあるけれど、主人公は蔦重こと蔦屋重三郎。幼くして実の父と生別した蔦重は、義理の父の仕事は継がず吉原の近くで絵草紙屋を始める。大手の店が醜聞で傾く中、蔦重は恋川春町などの黄表紙がヒットして見る見るうちに成功を収める。しかし、寛政の改革の締めつけで恋川春町は自死、蔦屋も財産の半分を奪われてしまう。それでも蔦重は長年育ててきた喜多川歌麿の美人画を当てて、またも隆盛に。ところが歌麿がほかの版元に引き抜かれてしまい、またも蔦屋は危機に。それでも蔦重には最後の切り札があった。長年探してとうとう見つけた希代の絵師、その名は東洲斎写楽……という話。
 親本は1983年の刊行。写楽の正体を探る本などで蔦屋重三郎の名は出てきてはいても、彼を主人公にしたものなどはまだほとんどなかった時代に書かれ、文春文庫版も絶版になっていた本作が再刊されたのは来年の大河ドラマ「べらぼう」で蔦重が主人公になったことからなんやけれど、今、書店に並ぶ蔦重がらみの新刊とは違い、本書は今は鬼籍に入った作者が40年前に作り上げた、独自の蔦重なのですね。その出自や、ただ一人愛した女おしのとの悲しい物語、そして意表を突く写楽の正体など、作家としての想像力を駆使した設定。そこには人と人の縁や絆のもろさ、そして強さの両面が描かれ、ともすれば当時の出版界の風雲児としておおらかに描かれがちな蔦重を、明るくふるまっていても、常にどこかに影が差す人物として描く。その人物造形には深く感じ入るところがある。恋川春町や喜多川歌麿だけやなく、歌舞伎役者の仲村仲蔵、川柳師の太田南畝など、当時の人気者たちを随所に登場させ、蔦重の人物像を読み手に印象づけている。以前読んだ杉本苑子「滝沢馬琴」と少し時代がずれるけれど、当時の出版界の描き方などをどう描いているか比較するのも面白い。おそらく大河ドラマの蔦重や写楽は本書とはかなり違う人物として描かれるやろうから、そちらではどう描かれるのかも楽しみになってきた。ドラマのおかげでこういった傑作が復刊されるのはありがたい限りです。「滝沢馬琴」ともどもお薦め。
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