はな寛太の死 [追悼]
漫才師、はな寛太さんの訃報に接する。享年61。死因は食道ガン。
はな寛太・いま寛大といえば、寛大さんの「ちょっと待ってね」のギャグフレーズがすぐに浮かぶ。レコードの時代からCDの時代に変わっても、「こんど『三年目のちょっと待ってね』いう曲でデビューするねん」のネタが十八番やったなあ。20年来何回同じネタを聞いたやろ。サゲまでわかってるのに、同じところで笑わせてくれる。ネタそのものも傑作というわけやないのにね。つまりこれが芸の力というもんなんやなあ。
巨体でもみあげの寛大さんに対し、寛太さんは小柄で愛嬌のある顔立ちというコントラストやったんやけれど、寛太さんは若いころはボディビルをしていて、服を脱ぐと筋肉粒々。「本物は誰だ」というテレビ番組でその体を披露してはったのは今から30年くらい前のことか。
最近では奈良の葬儀会社のCMに出演していて、頭の上に蛍光灯をつけて雲の上から下界を見下ろし「満足じゃ、満足じゃ」とやってはった。なんか縁起の悪い役回りやなあと思うてはいたけれど、こんなに早くにほんまに下界を見下ろすことになろうとは、ご本人も思うてはったのかどうか。皮肉なことに、葬儀はその奈良の会社やなく、全国展開をしている大手の葬儀会社なんですなあ。
はな寛太・いま寛大という芸名は藤山寛美さんの命名やと、漫才の中でも自慢気にいうてはった。そやから「寛」の字が入ってるんですね。汚い駄洒落ではあるけれど、ご両人の漫才は決して下品やなかった。飄々とした芸風で話芸の巧みさをいつまでも感じさせてくれるコンビで、こういうベテランがいてるから、松竹芸能の若手もしゃべくりの面白さで聞かせるコンビが育つんやなあと思うていた。この味を受け継ぐ若手が、同じように息の長い芸人として残っていってほしい。
謹んで哀悼の意を表します。