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アナーキー・クレイジー [映画]

 今日は終戦記念日。参院選で大敗を食らったしんぞう首相は、万事波風を立てないという路線に変更したか、「戦後レジームからの脱却」を棚上げする気になったか靖国神社参拝はせず。いかにもしんぞう君らしいあっぱれな腰の引け具合ですね。腰が引けているのが私のような者にもはっきり見えてしまうところがなんとも美しい国である。

 この盆休みには、私のような者を狙い撃ちにしたかのように衛星第二放送で月曜から4日連続でクレイジーキャッツの映画を放送している。それも定評のある初期の作品やなく、「大冒険」「クレージー大作戦」「クレージーの大爆発」「クレージー黄金作戦」という後半の怪作を並べてくるんやから、この編成をした人は只者やないな。
 映画そのものはストーリーはむちゃくちゃで細かいところはでたらめでひたすら植木等の「まあまあいいってことよ」の一言ですませ、ラストは決着がつかなくてもクレイジーキャッツに歌い踊らせておしまいという、現在の映画界ではとても作られそうもないものばかり。
 そやのに、そのむちゃくちゃがいかにおもろいか。例えば「クレージーの大爆発」ではわけのわからん秘密結社が登場するんやけれど、その日本支部の幹部を平田昭彦(知らん人はいるまいが、「ゴジラ」の芹沢教授を演じた人)が演じているというだけで思わず「そういうもの」と納得してしまうんである。「大冒険」の偽札を作っている国際秘密組織の幹部をあの越路吹雪が演じていたりするのには度肝を抜かれた。「クレージー大作戦」の札束をめぐるカーチェイスは伊豆の地道で埃を蹴立てながらほんまに追っかけあいをしているから迫力がある。「大爆発」のラストではなんと富士山の火口で水爆を爆破させクレージーの面々はロケットで月まで行ってしまいそこで歌い踊りまくるという、なんでそんなラストになるのかわけがわからんエスカレートぶり。
 このむちゃくちゃさは何なんや。勢いか。いや、後期のクレージー映画は勢いが落ち始めているから、違う。前期のクレージー映画は植木等が会社や社会でのし上がっていくというパターンが多かった。今週見ている映画は基本的には植木等は悪人、犯罪者や。
 70年安保の大学紛争やら高度経済成長のひずみやら、いろんなものが噴出してきた時代に、監督古沢憲吾は実は徹底したニヒリズムに陥り、アナーキーな路線を突っ走ったんやなかろうか。ひたすら上昇を目指した時代の行き着く先に待っているものは歌い踊ってなしゃあないものやったんやったのかもしれん。
 映画史上に残る傑作やないかもしれんけれど、ほな今の閉塞した時代にこんなぶっとんだ映画を作れる監督が、会社が、それを演じられる役者がいるんか。いてほしい。いてほしいなあ。ほんまに、新作でこういうむちゃくちゃな映画を見てみたい。


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