犬神家の一族 [映画]
BSで放送された、市川崑監督「犬神家の一族」(1976年版)を妻といっしょに見た。
これは角川映画第一号ということで、妻は当時テレビでもちゃんと見てなかったそうで、いわば初見。私もテレビ放送されたのを一度見たきりで細かいところは覚えてなんだ。
ええできの映画やないですか。公開当時は確か「市川崑監督の美学が出すぎて、横溝正史のどろどろしたものが出てない」という批判もあったかと記憶しているけれど、いや、それでよかったんやと思う。あの血縁のどろどろ物語をその土俗性を前面に出したりなんかしたら、もう大変。見てて嫌な気持ちになり途中で映画館を立つ人が続出したやろう。
ところが市川監督は入り組んだ人間関係を説明なしでもわからせるという凄腕を見せた上で、島田陽子の美しさを前面に押し出し、高峰三枝子の凛とした存在感を背景においてこの醜くもおぞましい物語を不快感なしに見せることに成功してるやないか。
ややこしくも入り組んだ物語を2時間半くらいにまとめるために、人間像の掘り下げなんかは浅いけれど、ようここまでまとめたなあ。それからセットがすごい。終戦直後の日本にタイムスリップしたかのようです。CGのない時代やから、全部再現したんやな。
というわけで、「犬神家の一族」(1976年版)は記憶してたのより数段おもろい映画でした。リメイク版は、逆に怖くてよう見んな。