プレートルのウィンナ・ワルツ [音楽]
昨日見られなんだ「ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート2008」を今日録画でやっと見る。
今年の指揮者はフランス人の大ベテラン、ジョルジュ・プレートル。ウィーン・フィルのニューイヤーでフランス人が指揮をするのは珍しい。第1部では「ナポレオン行進曲」「パリのワルツ」などフランスにちなんだ珍しい曲が並んだのはそのためですね。その第1部で最もポピュラーな曲はワルツ「オーストリアの村つばめ」かな。いや驚いた。歌わせるところではぐっとテンポを落としてゆっくりと聴かせる。ふつうテンポをここまで落とすと曲が重く感じられるものなんやけれど、プレートルが振るとそうはならん。とてもチャーミングなんです。不思議やなあ。
これは第2部の「皇帝円舞曲」でもそう。ここを聴かせたいというのがはっきりとわかる。シュトラウス一家のワルツやポルカなんてのはもともと大衆向けのポピュラー・ミュージックなんやから、それでええんです。小澤やヤンソンスみたいに真面目に音符の音をかっちり鳴らさせるだけではおもしろくない。去年のメータはニューイヤーは何度も振ってるからそこらあたりは心得ていて楽団もリラックスした感じで楽しく演奏していたな。今年の場合、常連ではないフランス指揮者ということで、ウィーン・フィルの個性と指揮者の個性とがぶつかり合いつつ音楽を楽しむという非常に素敵な演奏になっていた。
サッカーの大会がオーストリアであるらしく、それにちなんだ余興もあったりして(コンサートマスターが立ち上がって首からかけたタスキを振ったりしたら識者が胸からイエローカードを出し、曲が終わると今度はコンマスがレッドカードを出して指揮者を退場させるというような遊びです)、会場もおおいに沸いた。
カラヤンが指揮台に上ってからはニューイヤーの指揮台に立つことが名誉みたいになってしもうた感があるけれど、今年のプレートルはそんなことを感じさせないええコンサートにしていた。さすがは老巨匠。余裕があったということやなあ。音楽の楽しみ方を知っている指揮者という美質が前面に出たニューイヤー・コンサートでした。