草原と吉弥 [テレビ全般]
今日のドラマ「ちりとてちん」には泣かされた。師匠の徒然亭草若が隠していた病が弟子たちに知れてしまい、5人5様に哀しみを表現するという展開やったんやけれど、特に筆頭弟子の徒然亭草原を見ていると、真実の哀しみが迫ってくるみたいやった。
草原は出番前の楽屋で、なんとか笑い顔を作ろうと鏡に向っている。無理に笑う顔は震え、両手の指先で口元をつりあげて笑っているような形にしようとする。
これだけやったら、特に凝った演出というわけやない。泣かされたのは、草原を演じてるんが桂吉弥さんやということや。吉弥さんはほんまに自分の師匠を病気で亡くしている。そう、桂吉朝師匠です。視聴者すべてがそのことを知ってるわけやなかろうと思うけれど、実際に師匠をなくし、ドラマとはいえ2人目の師匠とも死別する。役作りをするときに、吉朝師匠のことが脳裏をよぎったんやないかと思うと、その芝居がものすごくきつくリアリティをともなってこちらの胸に迫ってくる。
ほんまはどうかわからんよ。そやけど、大なり小なり現実と芝居がオーバーラップしたやろうと思うんですよ。
草原は大きい声をあげて泣かない。ただ、笑おうとすればするほど口元がゆがむ。そこにリアルな「哀しみ」を感じた視聴者は多かったんやないか。
これは5人の弟子役のうち、吉弥さんにしか表現でけんレベルの芝居やと思うた。草原と吉弥さんがダブって見えて、こちらも胸がかきむしられるような「哀しみ」を感じた。
お手軽に登場人物を難病にかからせて殺しては「感動」を売り物にするドラマとは、レベルが違う。「感動」なんていう手垢のついた言葉では表現したくないな。