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直訳調訳文の楽しさ [読書全般]

 ここしばらく「モンテ・クリスト伯」やの「オリバー・ツイスト」やの「三銃士」やのを立て続けに読んでいる。その前に読んだ「赤と黒」は「光文社古典新訳文庫」で読みやすく工夫されていたけれど、それ以外のものは古い訳文をそのまま出し続けているものばかり。
 実は「オリバー・ツイスト」と「三銃士」は角川文庫。この出版社はわざわざ改訳版を出す手間をかけるのが嫌なのか、1960年代から70年代はじめに訳されたものをカバーだけ新しくして出している。実はそれがいい。訳文はもろ直訳調で日本語としてスムーズに頭に入ってこなかったりセリフが大時代的やったりするんやけれど、それがなんというのか「古典」らしさを感じさせてだんだん楽しくなってくる。
 そうやなあ。例えば小学生の時に初めて手に取った文庫は新潮文庫の「シャーロック・ホームズの冒険」やった。延原謙の独特の訳文がそれまで読んでいた子ども向けにリライトされたものとかなり雰囲気の違うものやったから、慣れるのに時間がかかったけれど、慣れてきたらその調子が癖になってきたと記憶している。海外SFの読み始めは古本屋で安くで買えた創元推理文庫やったけれど、あとからハヤカワ文庫で読み返して全く印象が違うたのに驚いたこともある。むろん創元が直訳調でハヤカワの浅倉さんや伊藤さんの訳がなめらかで読みやすくわかりやすいものやったのはいうまでもありません。
 で、おっさんになって逆にそういう直訳調のものを次々と読み、あの頃の気分を思い返したり、大時代的な雰囲気を味わって楽しんだりしてると、そういうわけ。若い読者には新訳文庫を勧めるけれど、読書好きの中高年には古い訳文のものを勧めたい。なんというのか、「必殺仕掛人」と「必殺仕事人2009」くらいの違いがあるという感じなんですわ。こんな例えではわからんか。

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