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鉄の門 [読書全般]

 明日から入試。今日の午前中は校舎まわりの清掃や、願書等の整理など明日に向けての準備を徹底して行う。午後からは私は空き時間となったので、ネットで資料集めをしたり来年度への役職引継ぎの打ち合わせをしたり。ひととおり用事が終わるとほっとしてしばし休憩。参考書や人権関係の冊子に目を通しながらお菓子をつまむ。定時に退出。
 帰宅後は読書を少し。明日は通常よりも30分くらい早い営業開始なんで、早目にこの日記も書いてしまい、早めに就寝せねば。
 マーガレット・ミラー/宮脇裕子・訳「鉄の門」(創元推理文庫)読了。以前ハヤカワミステリ文庫で出ていたものが版元を変えての新訳版。旧訳じたい読んでへんから私には関係ないけどね。心理ミステリを得意とした作者の初期の長編ということで、かの乱歩先生が「心理的純探偵小説の曙光」と感嘆したと帯にはある。医師の後妻である主人公は結婚後どれだけたっても夫の妹や夫の死別した前妻(若き日からの親友でもある)の残した娘たちとの関係がうまくいかない。それでも娘の結婚を機に夫と二人きりの生活に近づいていくことに希望を見出している。ところが娘が婚約者をつれて来たあと、謎の男が配達してきた小箱をあけ、それから失踪してしまう。発見された時には精神的に変調をきたし、精神病院に入院する。すると彼女の同室の患者が変死し、彼女の精神はますます不安定となり、さらに彼女を追いつめるような手紙が届き……。
 小箱に入っていたものがなんで主人公を狂気に追いこむことになったのか。彼女に関係した人々の死は何を意味しているのか。サンズ警部の手元に送られてきた一冊の日記によって真相は明らかになるけれど、いやなんともやり切れん話であります。ミステリとしての面白さはあるんやけれど、それ以上に主人公とその周辺の人物の軋轢やら解明された真相やらは、重く苦しい。人の欲望、怨恨、嫉妬などがからみあって悲劇が増幅される。主人公の家族とは何の関係もない人物まで巻き添えを食らうとなると、やり切れん思いがする。つまり、それだけ誰もが持つ心の闇の部分を大きく引き伸ばして読ませるのがうまいということ。タイトルの「鉄の門」は主人公が入院する病院の門のこと。舞台は1940年代末期ということで、精神病患者はいわば隔離状態におかれている。それを象徴するのが「鉄の門」というわけです。パズラーではないけれど、明らかになる真相を最後までうまく隠しおおせる腕はなかなかのもの。もう少しこの作家の作品を読んでみたくなった。

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三月書房も閉店へ [日常生活]

 昨日からよく忘れ物のをする。昨日は職場から帰る時に手袋を忘れた。そのため、今朝は手袋なしで、手が冷たく感じられたらダウンジャケットのポケットに両手をつっこんでしのぐ。家を出てマンションの出口のところでUSBメモリスティックを忘れたことに気がついて一度家に取りに帰る。仕事の最中は忘れ物はなかったけれど、帰宅時に呑みかけの緑茶のペットボトルを置いて退出してしもうた。鼻の調子が悪いと口で息をしてしまうので、のどが渇かんように常備しているのにね。疲れがなかなか取れんのですわ。
 妻は妻であまり調子がよくないみたいやしね。今週の頭から今シーズン初めてまともな冬が来て、一気に体にこたえているのか。まあ父の状態とか気がかりなこともあるし、週末は休めてへんし、それらが複合しているのでしょう。
 日曜日に京都の書店のことを書いたけれど、今日朝日新聞の電子版の見出しを見ていたら、寺町通りにある三月書房も閉店やねんな。ここは思想書など昔の大学生たちにとっては聖地みたいな書店で有名やった。私は高校時代に一度入ってみて、とても歯が立たんと退散した覚えがある。もっとも福島正実「S・Fハイライト」(三一新書)なんてものを見つけて買うたのはここやったかな。三一書房は当時の大学生好みのかたい本やカウンターカルチャーの本をようけ出していたから、その中にたまたま福島さんのショートショート集が混じっていたのです。SFもその時分はカウンターカルチャーとして扱われていたのかもしれんな。大学時代は学問関係の本は大学生協で買うていたかし、だいたい大学は寺町からかなり離れていたから、三月書房とはあまり縁がなかった。
 とはいえ、京都の文化を支えるシンボル的な書店やったから、閉店となると寂しいね。なんでも店主が高齢化し、後継者がいてへんので閉店することにしたそうな。三月書房に代わるような書店はもうないし、これも時代の流れなんか。学生の街、京都ですらこうなんやから、全国的に書店が減っていくのは当然なのかもしれん。京都で生まれ育ち、学生生活を送った身としては、なんともやり切れん思いではあるなあ。

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方壺園 [読書全般]

 朝から冷えこむ。ダウンを着こんで出勤。ただ、入試出願受け付けは普通の上着にネクタイというスタイルなんで、なるべくヒーターの近くにいるようにする。午前中の4時間、ほとんど出願しにくる中学生はいてへん。いつも2日目はこんなもんやけれどね。
 土日と外出して疲れが取り切れてへんから、ただ待っているだけやと眠くなる。そんな時に限って出願にきたりするから油断でけん。
 午後からは疲れと眠気が襲ってきて、事務作業を低速モードでこなし、定時に退散。
 帰宅後はのびておりました。夕食後、妻とアニメを見たりして過ごす。今日は風呂にゆっくりつかって血行を良くし、早目に寝ることにしましょう。
 陳舜臣/日下三蔵・編「方壺園」(ちくま文庫)読了。作者のミステリ短編集「方壺園」に収録されていた6編と、「紅蓮亭の狂女」収録の3編を合わせた新編集の短編集。舞台は多くが中国。表題作は唐末。あとは清末などが舞台。現代日本を舞台にした「梨の花」もトリックには倭寇関連の文献が関係している。唯一「獣心図」のみインドのムガール王朝が舞台で異彩を放つ。いずれも作者の得意な中国史に密室殺人などの本格ミステリを組み合わせ、独読な味を出している。そのトリックや謎の解明などはさすが乱歩賞作家。その時代の中国やないと成立せん動機もあったりするあたりの仕掛けもうまい。華僑社会の人間関係、宮廷ならではの後継者争いなど、歴史的背景に深い造詣がないと書かれへんものばかり。しかも謎ときには決まった名探偵があたるわけやなく、関係者の一人が真相を解明していき、時には犯人の罪を許す場面もある。その情のかけ方が時代背景とマッチしていたりするのですね。こういうミステリを書ける人はそうはいてへんのやないかな。作者の著書では歴史小説がまだ生きていたりするけれど、ミステリのほとんどが絶版になっているだけに、本書の復刊は嬉しい限り。私は乱歩賞作品「枯草の根」(講談社文庫)など何冊か作者のミステリは読んでいたので、ミステリ作品が軒並み絶版なのを残念に思うていた。中国史にくわしくなくても、純粋にミステリ小説として楽しめるし、中国史を少しでもかじったことがあればより深く楽しめる。歴史を俯瞰する時の透徹した視点と、歴史の波の中でもがくように生きる人間たちの営みのバランスが絶妙なんでありますよ。

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ジュンク堂京都店閉店へ [日常生活]

 朝から雨模様。例によって深夜アニメに日曜朝の定番番組を見たりしてから、昼前に出て、阪急で上洛。「たちよみの会」の例会で「フランソア喫茶室」に行く。
 古参会員Y氏が来てくれた。例会に来る前にジュンク堂京都店に寄ってプロ野球選手名鑑を買うてきたとのこと。で、なんとそのジュンク堂が今月いっぱいで閉店するという。30年以上四条通にでんと腰をすえていた。あのころはまだ駸々堂が河原町通りにあり、四条河原町近辺には京都書院、オーム社書店があり、三条河原町あたりにはふたば書房、萬字堂、そろばん屋、文祥堂書店など多くの書店が棲み分けをしていた。むろん旧丸善も健在やった。
 四条通りにはすでにブックストア談があって、ジュンク堂の進出にあたっては、ブックストア談の主力商品やったコミックスをジュンク堂は扱わんという取り決めをしたという話も聞いた。ここにあげた書店はすべてなくなってしもうた。文祥堂書店のみ、場所を三条寺町に移して営業していたけれど、今はどうなったかな。駸々堂は倒産し、あとにブックファーストが入ったけれど、ビルの建て替えでなくなった。四条河原町の角のビルの上の階でブックファーストは営業を続けていたけれど、数年前に撤退。新京極に紀伊国屋書店が来てた時期もあったけれど、すぐに撤退。河原町通りには新丸善が開店したけれど、書店はそれだけになってしもうている。
 京都の市内では今は大垣書店が次々と出店しているけれど、四条通りや河原町通りには進出してきてへん。
 四条のジュンク堂に「たちよみの会」例会後に行ったりしたこともあった。教員採用試験の参考書を買うた事もあったし、SFマガジンで書評をしていたころは新刊を探しにこまめに通っていたこともあった。
 ジュンク堂ですら店をたたむんか。学生の街でもある京都でこういう大型書店がたちいかんようになるというのは、けっこうショッキングであるなあ。ここ数年は新丸善が手ごろな広さなんで、「たちよみの会」例会後は必ずそちらに行っているから不便ではないけれど、名前は丸善でも中身はジュンク堂やから旧丸善の独特の雰囲気はないしねえ。
 さて、四条のジュンク堂のあとはどうなるのかな。それも気になるね。
 例会後、丸善に行って文庫本を何冊か購入。Y氏と夕食にチャンポンをとり、散会。
 阪急で帰阪。帰宅後は妻とおしゃべりをしたりして過ごす。
 雨は一日降ったりやんだり。けっこう疲れた。明日からまた仕事か。今週は入試があるんでけっこう忙しいけれど、もつかなあ。

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怒る元気 [日常生活]

 朝は少しゆっくり目に起き、例によって深夜に録画したアニメを見て過ごす。昼前に外出。阪急の快速特急“雅洛”で上洛。いつも混む観光列車なんやけれど、今日はけっこう空席も目立つ。やっぱりコロナウィルスの影響なんかなあ。いつもならたいてい大きく聞こえてくる中国語の会話が聞こえてこない。中国人観光客が減っているんやろうな。
 今週も父の見舞いで病院に。疲れてるから外出は控えたかったけれど、父の様子を確かめんといてられん。見舞いに行って理不尽な怒りをぶつけられたけれど、まだ怒る元気が残っているのをよしとせねばなるまい。
 病院を辞去してすぐに帰阪。帰宅してすぐに午睡。たっぷり寝る。目を覚ましたらあたりは暗くなっていた。起床後すぐに夕食。食後は昨日録画した「未来少年コナン」を見る。今週は「ダイスの反逆」の回。ほとんど宮崎さんが原画を書いているんやないかという感じの絵柄と動き。コナンがラナをだいて空中を飛び、着地して全身しびれるという屈指の名場面がある。この動き、アニメならでは。ジブリ映画ではもうここまで漫画チックな動きはさせてへん。私が「未来少年コナン」を宮崎アニメの代表作と思う大きな理由です。
 コロナウィルスによる肺炎は、国内で感染者が増えてきた。明日も外出するんで、手洗いはまめにしないとね。総理は「人混みを避けて」と言うてるけれど、そんなんいうてたら消費活動も停滞し、「コロナ不景気」におちいるぞ。そんな個人に責任をおしつけるようなことを言うてんと、どうせ嘘であっても「政府としてできることをしっかりやる」くらいのことは言えんのかね。なんというか、自分の責任を回避する術に特化した能力の高い総理であるなあ。

 明日、2月16日(日)は、「たちよみの会」例会です。多数のご参加をお待ちしています。

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これからの日本、これからの教育 [読書全般]

 今日も温い一日。午前中から午後にかけて入試の出願受け付けをし、午後は保健室担当の会議。養護教諭の先生から義理チョコなれどゴディバのチョコレートをいただく。ありがたく賞味。やっぱり一日だるく、受け付けと会議は気を張っていたんでなんとかもったけれど、終了後はガス欠状態。事務作業をぼちぼちと。定時に退出。
 帰宅後、妻から聖ヴァレンタインの日の贈り物としてブラックサンダーやらチロルチョコやらどっさりといただく。ゴディバもええけれど、駄菓子のチョコレートもまたよろしいな。日本のチョコレートの水準の高さがようわかる。
 前川喜平、寺脇研「これからの日本、これからの教育」(ちくま新書)読了。もと文部官僚の二人が教育行政の立場から教育の在り方について徹底対談。前川氏は夜間中学校や民族学校などマイノリティや貧困層への教育の重要性を訴え、寺脇氏は誤解されがちな「ゆとり教育」が目指した、個人個人が考えて問題解決の能力をつけることの意義を語る。中教審や教育再生会議から押しつけられる現場無視のアイデアをいかにして自分たちの理想の教育に転化していったかなど、文科省と政権の水面下のやりとりなど、生々しい話題も語られ、政治家や識者と呼ばれる人たちが短兵急に結果を求めることの愚を戒める。教育による結果が出るのは10年後、20年後という長いスパンで見ていかなければならないという両名の主張には、全くもって同感。寺脇氏が作りあげた「総合的な学習」には私も長年現場で携わってきただけに、その意図はようわかるし、前川氏の語る障碍者との共生教育や知的障碍者の卒業後の進路に関する考え方にも納得できることが多々ある。国家主義と市場主義に基づく「教育改革」に対する警鐘など、両者の知見は現場の教員にとってはよう言うてくれたと拍手を送りたい。そして、こういった人たちが志半ばで文科省を去ることになってしまったという現実に暗澹たる思いを抱いたのであります。政治家が恣意的に教育に介入してくる現状を打破するにはどうしたらええんか。答えはそう簡単には出てこないけれど、とにかく教育現場で教員一人ひとりが生徒たちにしっかりと向き合うしかないんやろうなあと愚考する次第。

 2月16日(日)は、「たちよみの会」例会です。多数のご参加をお待ちしています。

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アダムとイヴの日記 [読書全般]

 4月初めなみの陽気やそうな。この時期に急にこんなに温くなると、体がびっくりしてしまいホメオスタシスなるものの調子も変になったか、妙にだるい。
 午前中は試験監督と成績処理。午後は会議と明日の出願受け付け会場の整備。来年度に向けての打ち合わせなどなど。だるいとか言うてられませんのや。定時に退散。帰宅後は疲れがどっと出てしばらくへたってました。夕食後、妻と録画したアニメを見たりしてから、パソコンに向かいかきもの。明日は出願受け付けの担当なんで、早目に寝ましょう。
 マーク・トウェイン/大久保博・訳「アダムとイヴの日記」(河出文庫)読了。聖書「創世記」で神に作られた最初の男女であるアダムとイヴがそれぞれ日記を書いていたら、というユニークな発想で書かれた作品。原著のイラストをそのまますべて収録している。「アダムの日記」は、見開き左にアダムが書いた絵だけの日記(アダムはむろん文字を知らない)、右にその訳(?)という構成。いきなり現れたイヴに最初は戸惑い、警戒し、やがていっしょにリンゴを食べてエデンの園から追放される。そして長男のカインが産まれると、またも警戒する。おもしろいのは、聖書ではエデンから追放されることが人間の「原罪」となるのに、本書ではアダムという神に庇護された無垢な魂が自立し、人間らしくなり、「愛」を知るという展開になっているということ。「不思議な少年44号」でも無神論的な描写が随所に見られたけれど、どうもトウェインは「神の愛」になにかしら疑いを抱いていたんやないかな。続く「イヴの日記」は、一転して見開き左の挿画はイヴの描いたものというわけやなく日記の内容に合わせた絵になっており、右側の「日記」も女性の心情を細やかに描いた文章になっている。「アダムの日記」とはすべてにおいて対照的にしているんやね。内容も「アダムの日記」と裏表になるようにしてあり、最初は男性なるものの頭の悪さをいちいち指摘しながらもだんだんアダムにひかれていく様子が詳細に綴られている。ここでは蛇に誘惑されてリンゴを食べるんやなく、イヴは主体的にリンゴを食べようとしている。神からあたえられた禁忌を意識せず、思うがままに生きるイヴの様子は、作者が女性に感じている、男にない美点を示しているんやないかな。そして最後の一行! 帯で北村薫さんが「《最後の一行大賞》があったら、さしあげたい傑作です」と推薦文を書いてはるけれど、まさにその通り。トウェインの考える人間のあり方というものが、その一行に集約されているんやろう。ユニークな発想で書かれた寓話的な作品やけれど、これが作者の考える「愛」を示したものなんやろうなあ。まとまりもよく、解説もくわしくておもしろい。旺文社文庫、福武文庫、角川文庫と版元を変えつつ今度は河出文庫で復刊された。それだけの魅力ある作品であることは間違いない。

 2月16日(日)は、「たちよみの会」例会です。多数のご参加をお待ちしています。

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新しい十五匹のネズミのフライ [読書全般]

 今朝のスポーツ紙はどこも野村克也さんの訃報が一面、と思うでしょ。ところが大阪版ではスポーツニッポンだけが裏一面。一面は練習試合で近本選手が二塁打を打ったのを堂々と載せていた。理由は歴然。南海ホークス時代からスポニチは鶴岡監督派ということで野村さんはタイガースの監督時代もスポニチの記者に対しては口をきかなんだというのですね。自然、スポニチだけは野村さんの扱いがよそよりも悪くなる。逆に専属の解説者をしていたサンケイスポーツは扱いがでかい。星野仙一さんは日刊スポーツの解説者やったから、ニッカンが一番凝った紙面を作っていた。まあそういうものです。
 そして「週刊ベースボール」は選手名鑑特大号で、通常の連載をすべて休載という思い切ったことをしていた。次週予告に野村さんの連載も入っていたのは当たり前ですね。果たして原稿はあがっていたんやろうか。あがっていたとしたらそれが絶筆ということになるなあ。
 お仕事は、在校生が今日から学年末考査なんで、試験監督。午後からは会議。終了後は在校生の成績処理を途中まで行う。定時に退出。外は雨。
 帰宅後は、昨日の深夜録画した「平成紅梅亭」を見る。桂米朝五年祭特集ということで、吉弥「軽業」、南光「抜け雀」と2000年収録の米朝「らくだ」を放送。「らくだ」は火葬場に行く前のところで切ってはった。ああ、やっぱり名人やなあ。
 島田荘司「新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険」(新潮文庫)読了。久々に作者が手掛けたホームズ・パスティーシュ。正典の「赤毛組合」「這う人」「まだらの紐」「四つの署名」などをモチーフに、ワトソン医師が正典では隠していた真相を記した記録、という体裁。ホームズ・ファンなら思わずにやりとしてしまうような仕掛けもあるし、タイトルになっている「新しい十五匹のネズミのフライ」という謎の符丁の謎解きもさすがという感じ。ではあるけれど、何か今ひとつ楽しめなんだ。別にホームズがスーパースターでなくてもかまわんし、コカインの常用で錯乱状態になるというのも普通に考えたらありやと思う。そやけど、それと正典で矛盾を指摘されている作品の真相を強引に結びつけてみたり、ホームズの推理が実はすべて的外れやったりなんてのはやっぱり素直に楽しまれへんのですよ。正典ではホームズとワトソンの会話の上だけで登場するワトソンの兄の実像を出すのはいいけれど、兄嫁をめぐるワトソンの大活劇というのには違和感があったしね。作者が凝れば凝るほど、正典とのギャップがはげしくなり、パスティーシュとしては原作の雰囲気から離れてしまうという感じがするのですね。あと、本書で扱われる「四つの署名」をモチーフにした犯罪については、これと正典の「四つの署名」との整合性が全く取れてへんのも気になった。これ以上書くとネタバレになるのでやめておくけれど、作者はそれほどホームズに思い入れがないのかもしれんのやないかという気がしてならなんだ。北原尚彦さんや田中啓文さんとは明らかにスタンスが違うんです。ホームズが大好きで大好きでという方には、逆にお薦めしません。ミステリとしてのホームズものに対してなにかしら不満のある方ならばおもしろがって読まはるかもしれんけれどね。

 2月16日(日)は、「たちよみの会」例会です。多数のご参加をお待ちしています。

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野村克也の死 [追悼]

 今日は建国記念の日。いつもよりはゆっくり目に起きて、朝から結局だらだらと録画したアニメを見て過ごす。昼食後、午睡。夕刻起きてきて、かきものをする。中断して読書。夕食後も読書。切りのいいところでやめて、パソコンに向かう。疲れているせいかなんかだらだらしてしまうなあ。
 プロ野球のもと捕手、監督、解説者の野村克也さんの訃報に接する。享年84。死因は虚血性心不全。
 この前テレビで見た時は、移動は車椅子やったから、かなり弱ってるなあと思うていたら、急な訃報にびっくり。週刊ベースボールの連載などでまだまだ健筆をふるって(おそらく口述筆記やと思うけれど)いはったからね。とはいえ、最近の著書も書店でぱらぱらと読んだらいつもと同じことしか書いてなんだし、週刊ベースボールの連載でも同様やったから、「野村さん、もう隠居しはったら」なんて思うてはいたんやけれども。
 子どものころは南海ホークスの野村、でしたね。時々土曜の夕方に毎日放送でちょびっとやっていたホークスの中継でしか見たことないけどさ。西宮球場や西京極球場で阪急ブレーブスの試合を見に行った時も相手はオリオンズ、ライオンズ、ファイターズと関西以外のチームとの試合ばっかりやったもんなあ。生で野村さんの打席を見てへんのやね、私。機会はあったと思うけれど、偶然ホークスの試合だけ生で見てへんのですよね。
 そやから私の最初の記憶にある野村さんは、漫画「あぶさん」の登場人物として、かもしれんなあ。あと、「カルビー プロ野球スナック」についていたカードで胴上げされていのが当たったのは覚えている。大事に置いてあるので探せば出てくるやろうけれど、整理が悪いのでどこにあるかわからん。
 テレビの解説で「野村スコープ」なるものを使い配球の説明をしていたけれど、あれはうっとおしかった。テレビ画面にいらん情報が表示されるようになった走りかな。今はもっとうっとおしくなってますけどね。ただ、解説はくわしくておもしろかった。スワローズで名将と呼ばれて、タイガースの監督になったけれど、春先はよくても夏場に失速するチームを立て直すことはでけなんだ。のちに著書でタイガース時代のことをしつこくぼやいていたけれど、赤星さん、藤本さんらを獲得してチームの体質を変えたのは野村さんやと思うて感謝もしているから、タイガースファンとしてはやめてほしかったなあ。実際、矢野現監督や桧山進次郎さんみたいに野村監督がいてなんだら主力としてのちの優勝に貢献する選手は育たなんだんやからね。
 当時の久万オーナーに「星野さんみたいな監督やないとこのチームはあかん」と進言したというから、その眼力はみごとなもの。さすがです。ぼやきというよりは愚痴が多くなった晩年はいかがなものかと思うことが多かったけれど、プロ野球を面白くしてくれた名選手、名監督やったことは間違いない。
 謹んで哀悼の意を表します。

 2月16日(日)は、「たちよみの会」例会です。多数のご参加をお待ちしています。

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異種族レビュアーズ [テレビアニメ]

 今朝は新聞休刊日なんで、出勤までの時間に余裕があったけれど、早目に出てコンビニで即売版の日刊スポーツを買い、駅のホームで読んでいるんやから電車に乗る時間はいつもとたいして変わらんのでした。
 出勤したら、学生支援機構から1人分だけ予約奨学金の採用通知が届いていた。残り3人のうち1人だけ、か。そんな五月雨的な通知の仕方はやめてよ。今年の業者はほんまにひどい。この時期、3年生になるとどの高校でもほとんど学校に来る日はない。送られてきた分に関しては担任の先生に渡し、急ぐのならば本人が受け取るためにわざわざ登校してもらわなならん。そういう事情なんか業者にはわからんのかもなあ。
 その他細々とした事務作業をこなし、午後からは会議が2件。定時に退出。帰宅してからは読書をしたり、夕食後に昨日録画した大河ドラマ「麒麟がくる」を見たり。
 朝日新聞のデジタル版でニュースをチェックしていたら、深夜アニメ「異種族レビュアーズ」についての報道がある。このアニメはファンタジー世界を舞台に「サキュ嬢」と遊び、その店のレビューをするという、まあ大人のマンガです。で、1月に第1話が放送されると、BPO(放送倫理・番組向上委員会。ベルリンフィルハーモニックオーケストラに非ず)にさっそく苦情が来たそうな。くわしくはこちらをご覧ください。
「性的な内容となっていて、このようなアニメが年齢制限もなく青少年が見られる現状に憤りを感じる」 「深夜アニメではあるが、ファンタジーとはいえ風俗店を男性が評価しており、女性キャラクターを蔑視している」 「アニメなのに風俗と下ネタばかりで子どもに悪影響がある」
 まあごもっともです。私も第1話で面白うてげらげら笑いながら見つつも「こんなんアニメ化してええんかいな」と思うたもんな。
 ただ、これ、深夜アニメなんで、例えばサンテレビやと午前2時からの放送。そんな時間に起きてアニメを見ている子どもがいるとしたら、それは悪影響どころの騒ぎやなく、生活習慣に問題があり、そんな時間までテレビを見られる環境を作っている保護者にも責任はあるやろうな。AT-X、BS11みたいなCSやBSやと、どんな子どもでも見られるということはないしね。
 で、放送局にも苦情がきたのかTOKYO-MXでは次回から放送を中止することにしたそうな。地上波の局に対しては視聴者の圧力は強いもんなあ。私はBPOの「テレビは子どもだけを視聴者として対象にしているものではないので、深夜帯に大人向けのアニメを、表現の自由の範囲内で放送することはできるというスタンスでテレビ局は制作しているのだと思う」という意見が妥当と思うけれど、この手のマンガをわざわざアニメ化してテレビで放送する必然性があったかという思いもある。ネットでの有料配信、DVDの発売にとどめておき、お好きな人だけが見られるというくらいの配慮はあってもええんと違うんかな。と書きつつも、サンテレビとKBS京都がTOKYO-MXに続いて放送中止にしたとしても、BS11だけは続けて放送してほしいなあなんて思うております。いや、男の性欲の卑小さを笑い飛ばすという風に見たら、なんとも哀しくも可笑しいアニメなんでありますよ。

 2月16日(日)は、「たちよみの会」例会です。多数のご参加をお待ちしています。

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