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アダムとイヴの日記 [読書全般]

 4月初めなみの陽気やそうな。この時期に急にこんなに温くなると、体がびっくりしてしまいホメオスタシスなるものの調子も変になったか、妙にだるい。
 午前中は試験監督と成績処理。午後は会議と明日の出願受け付け会場の整備。来年度に向けての打ち合わせなどなど。だるいとか言うてられませんのや。定時に退散。帰宅後は疲れがどっと出てしばらくへたってました。夕食後、妻と録画したアニメを見たりしてから、パソコンに向かいかきもの。明日は出願受け付けの担当なんで、早目に寝ましょう。
 マーク・トウェイン/大久保博・訳「アダムとイヴの日記」(河出文庫)読了。聖書「創世記」で神に作られた最初の男女であるアダムとイヴがそれぞれ日記を書いていたら、というユニークな発想で書かれた作品。原著のイラストをそのまますべて収録している。「アダムの日記」は、見開き左にアダムが書いた絵だけの日記(アダムはむろん文字を知らない)、右にその訳(?)という構成。いきなり現れたイヴに最初は戸惑い、警戒し、やがていっしょにリンゴを食べてエデンの園から追放される。そして長男のカインが産まれると、またも警戒する。おもしろいのは、聖書ではエデンから追放されることが人間の「原罪」となるのに、本書ではアダムという神に庇護された無垢な魂が自立し、人間らしくなり、「愛」を知るという展開になっているということ。「不思議な少年44号」でも無神論的な描写が随所に見られたけれど、どうもトウェインは「神の愛」になにかしら疑いを抱いていたんやないかな。続く「イヴの日記」は、一転して見開き左の挿画はイヴの描いたものというわけやなく日記の内容に合わせた絵になっており、右側の「日記」も女性の心情を細やかに描いた文章になっている。「アダムの日記」とはすべてにおいて対照的にしているんやね。内容も「アダムの日記」と裏表になるようにしてあり、最初は男性なるものの頭の悪さをいちいち指摘しながらもだんだんアダムにひかれていく様子が詳細に綴られている。ここでは蛇に誘惑されてリンゴを食べるんやなく、イヴは主体的にリンゴを食べようとしている。神からあたえられた禁忌を意識せず、思うがままに生きるイヴの様子は、作者が女性に感じている、男にない美点を示しているんやないかな。そして最後の一行! 帯で北村薫さんが「《最後の一行大賞》があったら、さしあげたい傑作です」と推薦文を書いてはるけれど、まさにその通り。トウェインの考える人間のあり方というものが、その一行に集約されているんやろう。ユニークな発想で書かれた寓話的な作品やけれど、これが作者の考える「愛」を示したものなんやろうなあ。まとまりもよく、解説もくわしくておもしろい。旺文社文庫、福武文庫、角川文庫と版元を変えつつ今度は河出文庫で復刊された。それだけの魅力ある作品であることは間違いない。

 2月16日(日)は、「たちよみの会」例会です。多数のご参加をお待ちしています。

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