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妖都 [読書全般]

 午前中から雨。昨夜録画したアニメをひたすら見て、昼前に雨の中を出かける。阪急の特急で上洛。入院中の父を見舞う。少しばかりお世話をして、励ましの声かけをしてから辞去。阪急の特急で帰阪。往復とも余裕で座れる。コロナウィルスの影響もあるやろうし、雨が降っていたのでよけいに外出を控える人が多かったんやなかろうか。意外にマスクをしている人は少なかった。でも、確かにマスクなしで咳をしている人がいてると気になるね。
 帰宅してから一休みし、夕刻に再度外出。雨はあがり、青空も見えていた。鼻ポンプの医院に行き、睡眠時無呼吸のデータ診断など。先月と同じ薬を処方してもらい、調剤薬局で受け取ってから帰宅。
 帰宅後、昼のうちに録画しておいたプロ野球オープン戦の中継と、NHK福祉大相撲を見る。タイガースが3本のホームランで快勝。相手投手が調整段階とはいえ打ち勝つのは気持ちいいね。
 夕食後は妻と少しおしゃべりしたあとパソコンに向かう。今日はJ・S・バッハ「無伴奏ヴァイオリンソナタとパルティータ集」を佐藤俊介の演奏で。昨年の「レコ芸・アカデミー賞」の器楽部門の最優秀賞受賞CDであります。情緒たっぷりのバッハ無伴奏。私は好みかも。
 津原泰水「妖都」(ハヤカワ文庫JA)読了。津原やすみ名義でティーンズ小説を書いていた作者が、漢字に名前を戻して再出発した記念碑的作品。帯には「伝説の更始作、ついに復刊」とある。うーむ「更始作」という言葉は初めて目にした。確かにデビュー作やないから「処女作」とは書かれなんだんやろうけれど、ちょっと苦しいな。幻想ホラーという趣の作品で、東京の街を死者が彷徨するけれど、それが見える者と見えない者がいたり、死者を見た者が混乱して事故を起こしたりといった具合。どうやらこの現象の引鉄はすでに亡くなっているチェシャというボーカリストによって引き起こされたらしい。主人公は大学生の雛子という形で第一部は進むけれど、そこから続いて主人公が二転三転する感じ。死者の彷徨によってカオスがもたらされているのを、小説の構成をカオス的にして表現しているのかしらん。これはおそらくティーンズ小説という「わかりやすさ」を求められるジャンルを書いてきたことからくる反動なんやないかと思う。実は私もデビューこそでけなんだけれど、「双葉社いちご文庫」の編集長さんから声をかけられて何本か書いて送り、文庫シリーズ廃刊ということさえなければ、もしかしたら性別不明な名義で出していたかもしれんのです。そこでの注文は「女の子の一人称で、わかりやすいものを」というものでありまして、非常に苦労したのは覚えている。20代半ばのことやから30年前になる。結局デビューはできず、しかも何が書きたいのか自分を見失ってしもうた。その時のことを思い出すと、作者が非常にわかりにくく、しかも主人公が誰かも定かでないものを書きたくなった気持ちはわからんでもないのですね。ただ、その思いが強すぎて今読むとホラーのようで怖くなく、幻想小説のようで現実味があり過ぎ、てな感じのものになってしもうている。この作品は、つまり作者のティーンズ小説からの決別宣言やったんやろうと思う。ちなみに、この作品を親本発表当時に京都SFフェスティバルの合宿でまるでスプラッタコメディであるかのように話してくれた人がいて、その場にいた者は一同大笑いしたことがある。まさかこんな話やったとは。でも、嘘はついてなんだよなあ。確かにその人の話してくれた内容と同じですからね。四半世紀以上前のことやけれど、いまだに印象深い。本作の内容紹介をしてまわりを爆笑させた人とは、角川ホラー大賞短編部門を受賞してデビューしたばかりの小林泰三さんでありました。ホラーとギャグは紙一重であると思うので、あのときの小林さんの語りはあながち間違いやなかった……のかなあ。

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