SSブログ

暗鬼夜行 [読書全般]

 今日は朝から昨日の金曜ロードショーで放送されたアニメ「葬送のフリーレン」などを見る。一気に4話を映画枠で放送するとは、かなり力が入っている。作画は丁寧で、演出もよく、音楽、美術も素晴らしい。長命のエルフと短命な人間の触れ合いがゆったりと描かれていて、次回以降が楽しみ。
 昼前に出かけ、阪急の特急で上洛。月例の京都の医者行き。待合室はすいていて、早めに帰阪。帰宅して、午睡しようと寝ころんだけれど、読みかけの本が面白く、一気に読み切ってしまう。夕刻、社説のダウンロードをしてから、配信でタイガースの試合を見る。優勝してからこっち、緊張感がなくなったか、連敗が続く。今日なんか高卒新人の門別投手が無失点で5回を投げ切ってるんやから、援護してやってほしかったなあ。
 月村了衛「暗鬼夜行」(毎日文庫)読了。地方都市の中学校で、もと小説家志望の国語教師汐野が指導し、学校での最優秀作品に選ばれた読書感想文について、SNSで盗作だと発信される。さらにそれは1972年の入選作だという書きこみが続いて出される。学校にたまたま残っていた古い感想文集が見つかるが、その年度のものだけ見つからず。地元の県会議員の娘と交際し、政治家に転身しようとしていた汐野は盗作疑惑解明の責任者にされてしまう。盗作疑惑のある生徒は市の教育庁の娘。中学生の感想文という小さな事件が、政治家や教育委員会の勢力争いにまで広がる中、汐野は否応もなく政争に巻き込まれていく……という話。かつて京都の地方都市で中学校の講師をしていた時のことを思い出した。具体的な話は書けんけれど、狭い世界で教員たちの人間関係や生徒に対する姿勢などに辟易したことを思い出す。さすがに大阪府の高校にまでなると、転勤先も範囲が広いんで、この小説に書かれたようなコップの中の嵐みたいな騒動にはならんと思うけれど、地方都市の中学校ならばありそうなストーリーで、ちょっとぞくっとくる。特に中学校教員が多忙でだんだん教育への熱意が薄れ、出世することに目が行くとか、中学生たちの未熟ながら肥大した自我とか、学校とそれを囲む狭い世界の醜さみたいなものがえぐりだされている。登場人物はいずれも矮小で、人間の嫌な面をこれでもかこれでもかと見せつけてくれる。それもこれも地方都市の中学校という舞台に着目した作者の目の付けどころの良さに尽きる。これが高校になると、輪切りになった上の学校か下の学校かで展開が大きく変わるし、学区も広いのでこういう話にはならなんだと思う。中学校の生徒の読書感想文が盗作やろうがなんやろうがどうでもええやんかと思うけれど、それが市民を分断する大事件に発展するなんてあるかいなと思う人もいるやろうけれど、地方都市ならではのしがらみなんかがからむとこんなことになるんやろうなあと思わずにはいられず、読了後、嫌な気分にさせられる、けれど一気に読まずにはいられんスピード感がたまりませんね。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ: