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滝沢馬琴 [読書全般]

 本日も出勤日。曇天で時折ぱらつく。自分の持ち科目のテストと試験監督、そして下校指導の立ち番で午前中は終わる。午後から採点、なんやけれど、職場の個別に貸与されたパソコンに新しい「office」をインストールし、それに合わせて仕事用の新しいアドレスを登録したりという作業を職場で一斉に行うことになっていて、その作業が1時間半くらいかかる。そのため採点業務は全くはかどらず。
 定時を過ぎて1時間くらい残業したんやけれど、さすがにばてばてで集中力がもたず、作業を中断して退出。かというて、答案を持ち帰って宿題というわけにもいかず。明日はとても作業をしに職場にサービス出勤する気にはなれんしなあ。疲労の取れ具合を考慮しながら、もしかしたら定休日にサービス休日出勤をするかもしれん。まあ、できなくともある程度時間に余裕はあるんやけれどね。
 帰宅後、少し寝どこにどぶさり社説のダウンロードをしてから夕食をとる。食後は読書。
 さて、明日はどれくらい疲労を取ることができるか。
 杉本苑子「滝沢馬琴 上・下」(朝日文庫)読了。かつて文春文庫や講談社文庫で出ていたものが版元を変えて再刊。「南総里見八犬伝」を執筆中の馬琴が主人公で、白内障でまず片目が見えなくなり、ついに失明。その間に長男が死んだり、親類に不祥事があったりして、頑固で臆病者の馬琴は癇癪もちの妻や不愛想な嫁、孫が元服するまでのつなぎで養子になってもらった調子のよい親類の男たちに悩ませられる。さらには版元から「八犬伝」の続きをせかされたり、数少ない友人の渡辺崋山は「蛮社の獄」で謹慎の憂き目にあい、心を許せる相手もおらず。そんな中、なき長男の嫁のお路が盲目の馬琴の口述筆記をかって出るのだが……という話。
 とにかく馬琴をはじめとする登場人物たちの人物造形が見事。意固地で偏屈な馬琴、夫に理解のない妻のお百、自分を押し殺して謹厳実直にふるまうが時折ヒステリックになって発散する長男。感情を表に出すことのないお路の秘められた恋心など、さまざまな人物たちの織り成す人間模様がリアルに描かれている。武家の出であるというプライドと、ものかきという下賤な仕事に心血を注ぐ馬琴の内心での葛藤などは、馬琴本人と取材したかのよう。ベテラン歴史小説家である作者は、そんな馬琴と自分を重ね合わせつつ、それでも人格的に問題のある滝沢家の人々の姿を冷静な視線で描きつくしている。葛飾北斎や、娘の応為の描き方は、朝井まかての描いた二人とはまた違った魅力があるし、著作権のない時代に盗作まがいの作品を書き飛ばしたり人気歌舞伎役者のゴーストライターをしたりする当時の戯作者たちも生き生きと動いている。ラスト近くで、馬琴とお路が「八犬伝」を通じて関係性を変えていくところなど、読んでいて胸をさすものがあった。来年の大河ドラマ「べらぼう」に合わせての再刊という事みたいやけれど、ドラマの主役の蔦屋重三郎は登場しないので、ご注意を。まあそんなこととは関係なく、読み進めていくうちに江戸時代にどっぷりと入り込んでしまうような気にさせる傑作です。

 10月20日(日)は「たちよみの会」例会です。今月も13:00~15:00の短縮バージョンです。ご参加お待ちしています。
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