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スケープゴート [読書全般]

 今日も朝から昨夜録画した深夜アニメやら再放送の「カムカムエブリバディ」やら少しだけためていた大河ドラマ「べらぼう」を先週日曜の分まで見たりする。
 昼食後、午睡し、夕刻目覚めてからはスマホをいじったり読書をしたり。夕食後もひたすら読書。外は雨。この週末は晴読雨読の毎日ですね。
 ダフネ・デュ・モーリア/務台夏子・訳「スケープゴート」(創元推理文庫)読了。英国人の歴史学者ジョンは、フランスでの講義の帰途、自分とそっくりの男、ジャンと出会う。ジャンはジョンが寝ている間に彼の持ち物をすべて奪い、逐電してしまう。ジャンを迎えに来た車に乗せられ、彼はジャン・ドゥ・ギ伯爵として迎え入れられる。かくして1週間、彼はジャンとして生活することになる。険悪な関係の家族たちや、本物のジャンの過去の行状のために翻弄されるジョンだったが、事情が呑み込めるうちに彼はジャンとして直面する様々な問題に対して悪戦苦闘しながらも解決の道を図ろうとするが、それが裏目に出ることも。そんな中、一人娘のマリー-ノエルが失踪してしまい……という話。ジャン・ドゥ・ギなる人物のことがわからないままにその人物になり切ろうとする主人公と本書の読み手は次々と起こる出来事に同じように戸惑い、翻弄されていく。そのサスペンスたるや、読み手をとらえて離さない。ジョンがジャンであると信じて疑わない周囲の人々には違和感を覚えるけれど、そこは作者の仕掛けということで目をつむるしかない。その仕掛けが実にうまくできているだけに、読み手ははらはらしてしまう。ジャンの愛犬だけが主人とは別人であるということがわかって吠えたりするのですね。読んでいるうちに、本物のジャンが帰ってきたらどうなるのかと心配になってきたりする。そこらあたり、ラストまで読まんとわからんようになっているのもうまい。天涯孤独やったジョンが、別人のものとはいえ、家族や故郷を持ち、領地の人々や家族たちに愛着を感じるようになっていくあたりの心情の描写が優れているので、ラストは実にほろ苦い味わい。そして、読後、この物語の後日談を読みたくなってしまうという余韻。なんともいえぬ不思議な味わいの残るお話でありました。
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