大一揆 [読書全般]
今日はカムヤマトイワレビコノミコトが大王に即位したといわれている日。古事記やの日本書紀やのに書かれている内容から推しはかって2月11日と明治になって算出したという極めて根拠の薄い日。なので、「紀元節」という方が「建国記念の日」よりも正確やと思うのですが。まあ祝日なんて、日本では根拠があっても「ハッピーマンデー」で日にちを毎年動かしたりしているんやから、ええかげんなもんです。4月29日は昭和時代は「天皇誕生日」。平成になって「みどりの日」。そして「昭和の日」に。「みどりの日」は5月4日に移った。伝統がどうのこうのという人たちは、祝日に関しては文句をたれんのはなんで、と思います。それはともかく、仕事はお休み。
午前中はアニメを見たり読書をしたり。午睡の後、社説のダウンロードやら読書やら。煮こみうどんの夕食をはさみ、また読書。産経新聞の社説(主張)は毎年の定番で「建国記念の日であることを学校教育で徹底せよ」というようなことを書いているけれど、カムヤマトイワレビコノミコトが実在したかどうか、実在したとしても記紀の記述に信憑性があるかどうか、そこもすべて説明せんならんし、そんな説明を小学生にしたところで、覚えてはくれんと思うんやけれど、如何。
平谷美樹「大一揆」(角川文庫)読了。幕末、盛岡藩の描ける苛烈な税に対して、農民たちは何度も一揆を仕掛けては結局失敗し続けていた。主人公の三浦命助はそれまで一揆には関わらんようにしていたけれど、自分の家族を守るために一気に加わることにした。それまで勢いで行き当たりばったりにしていた一揆に対し、計画を立て、その通りに実行に移そうとする。新参者である命助の言葉に最初は耳を傾けなかった者たちも、その計画性に納得し、ついには認めることになる。そして大人数で仙台藩まで移動し、仙台藩から盛岡藩に圧力をかけるようにもっていくのだが、その間、浦賀に黒船が現れたため、各藩は混乱中で……という話。実話をもととした歴史小説で、一揆をここまで細かく描いたものはあまりないんやないか。たいていは武家の棟梁とか歴史の教科書に名前のある人物が主人公となっているケースが多いものね。本書では、まさに命を懸けて自分たちの生活を守ろうとする農民たちの動きを細やかに描きながら、三浦命助という卓抜した人物の行動と、一気に加わった者たちの意識の揺らぎなどを綴っていく。尊王攘夷を叫ぶ浪士たちに対して、命助は批判的で、そこには彼らが幕府を倒しても、結局はまた新しい幕府が生まれるだけという冷静で現実的な視点がある。それはおそらく作者の持つ視点なんやろう。一揆は成功するけれど、命助はそれにおごらず元の生活に帰っていく。ただ、この一揆は坂本龍馬などにも伝わり討幕の参考にもなったという。それなのに幕府が瓦解した後、東北は維新勢の標的とされてしまう。この皮肉なこと。東北人の、そして市井に生きる者から見た明治維新とは、きっと本作のようなものやったんやろうなあと思われる。作者はこの後、盛岡を舞台に原敬につながる歴史を書き続けているので、そちらも続けて読んでいきたい。歴史に名は残っているけれど、その存在がほとんど知られていないし、また支配者にもなろうとしなかった三浦命助という人物がいた。その行動をていねいに描き切った秀作です。
2月16日(日)は「たちよみの会」例会です。今月も13:00~15:00の短縮バージョンです。ご参加お待ちしています。
午前中はアニメを見たり読書をしたり。午睡の後、社説のダウンロードやら読書やら。煮こみうどんの夕食をはさみ、また読書。産経新聞の社説(主張)は毎年の定番で「建国記念の日であることを学校教育で徹底せよ」というようなことを書いているけれど、カムヤマトイワレビコノミコトが実在したかどうか、実在したとしても記紀の記述に信憑性があるかどうか、そこもすべて説明せんならんし、そんな説明を小学生にしたところで、覚えてはくれんと思うんやけれど、如何。
平谷美樹「大一揆」(角川文庫)読了。幕末、盛岡藩の描ける苛烈な税に対して、農民たちは何度も一揆を仕掛けては結局失敗し続けていた。主人公の三浦命助はそれまで一揆には関わらんようにしていたけれど、自分の家族を守るために一気に加わることにした。それまで勢いで行き当たりばったりにしていた一揆に対し、計画を立て、その通りに実行に移そうとする。新参者である命助の言葉に最初は耳を傾けなかった者たちも、その計画性に納得し、ついには認めることになる。そして大人数で仙台藩まで移動し、仙台藩から盛岡藩に圧力をかけるようにもっていくのだが、その間、浦賀に黒船が現れたため、各藩は混乱中で……という話。実話をもととした歴史小説で、一揆をここまで細かく描いたものはあまりないんやないか。たいていは武家の棟梁とか歴史の教科書に名前のある人物が主人公となっているケースが多いものね。本書では、まさに命を懸けて自分たちの生活を守ろうとする農民たちの動きを細やかに描きながら、三浦命助という卓抜した人物の行動と、一気に加わった者たちの意識の揺らぎなどを綴っていく。尊王攘夷を叫ぶ浪士たちに対して、命助は批判的で、そこには彼らが幕府を倒しても、結局はまた新しい幕府が生まれるだけという冷静で現実的な視点がある。それはおそらく作者の持つ視点なんやろう。一揆は成功するけれど、命助はそれにおごらず元の生活に帰っていく。ただ、この一揆は坂本龍馬などにも伝わり討幕の参考にもなったという。それなのに幕府が瓦解した後、東北は維新勢の標的とされてしまう。この皮肉なこと。東北人の、そして市井に生きる者から見た明治維新とは、きっと本作のようなものやったんやろうなあと思われる。作者はこの後、盛岡を舞台に原敬につながる歴史を書き続けているので、そちらも続けて読んでいきたい。歴史に名は残っているけれど、その存在がほとんど知られていないし、また支配者にもなろうとしなかった三浦命助という人物がいた。その行動をていねいに描き切った秀作です。
2月16日(日)は「たちよみの会」例会です。今月も13:00~15:00の短縮バージョンです。ご参加お待ちしています。