一人芝居「チマチョゴリ」 [演劇]
とにかく演技力に圧倒された。3人の女の子をひとりで演じ分けるんやけれど、髪をくくるゴムの位置を変えるだけで別人になる。民族学校に通う母と娘のチマチョゴリに対する思いの違い、母の友だちで地元の学校に通いまわりから差別される少女の屈折。そして電車内で行われるチマチョゴリ切断事件。きれいごとやない思いの強さがどーんとこちらの胸にぶち当たってきた。
こういうお芝居は生やないとあかんね。大阪を中心に近畿だけでしか公演をしてへんようなので全国のみなさんになかなか見てもらう機会はないと思うけれど、劇団のサイトはこちら なので、興味をもたれた方はどうぞ。
ただ、これだけのエネルギーをぶつけられるとさすがに疲れる。研究集会終了後、桃谷商店街を歩いていると、MBS「ちちんぷいぷい」のロケをしていた。スタッフが「写真撮影はしないでください」と書いたパネルを出していたので写真はありませんが、ピン芸人の友近さんとMBSの福島アナウンサーがお店の前でなんかレポートしてはった。立ち止まってまじまじ見るという雰囲気でもなかったんで、遠巻きに眺めていただけやけれど、こういう人気番組のロケなんてなかなかぶち当らんから、わざわざ桃谷まで行ってよかったと思うた次第。
帰宅後、サンテレビ「熱血! タイガース党」を見ていたら、バファローズの西投手がタイガースへのFA移籍を表明したと報じている。わっ、人的補償で誰を取られるんやろう。今のタイガースは期待できる若手が多いからなあ。バファローズさんは金銭補償のみですましてくださいなんて虫のいいことは言われんね。
真夏の夜の夢 [演劇]
今年の演目は「ミュージカル・真夏の夜の夢」。シェイクスピアの原作をアレンジして歌ありダンスありの舞台に仕立てたもの。それなりに工夫もされていたし、学校向けの公演としてはこのくらい噛み砕いた方がええんかもしれん。ただ、役者さんの歌が、ねえ。踊りながら歌うから多少息が切れるのは仕方ないんやろうけれど、おそらくこの劇団はミュージカルをメインにしているところやないんやろう。かなり苦しかった。男が女を追いかけまわしてドタバタと走り回るのを喜劇的な演出と思うたはるんかもしれんけれど、ことシェイクスピアに関してはその必要はないように思うけれどなあ、と前任校で何度も鑑賞会の担当として演目の選定にかかわってきた身としては、注文をつけたくなるのです。
たぶん私が前任校のように鑑賞会の担当をしていたら、この芝居は選んでなんだと思う。当時私が演劇を選ぶ時の基準は、生徒が感情移入できるかどうかがポイントやった。ミュージカルを見せるんやったら、それを専門にしている劇団を選んだ。DVDを借りて、通して見、いくつもの舞台の中から自分の好みとは関係なく生徒たちの反応を予想して選定したものです。
まあ、部外者が口出しをするものでもなし。こういうのも場数を踏むことでわかってくることやしね。
会場から電車、バスを乗り継いでお山の学校に。午後からたっぷり教材作成というつもりやったけれど、急にまた気温があがったせいで夏バテ状態。なかなか具体的な展開のさせ方が思い浮かばず、来週に持ち越し。いつもと同じ経路で帰途についたにもかかわらず、えらい長く感じたなあ。明日は朝寝するぞう。
虚航船団公演「瑠璃色美術缶」 [演劇]
なんでも主宰者の秋山シュン太郎さんが体調を崩して入院をしたりして、休団状態にあったらしい。公演が終わったあと、北野さんにあいさつに行ったら「解散したと思われてたでしょう」なんて言われてしもうたけれど、確かに6年前までは年2回ずつ公演をしてはったりしたから、「また見たいのになあ」とは思うていたのであります。
で、今回の復活公演でありますが、出し物は「瑠璃色美術缶」。近未来の日本を舞台に、日本が外国人に乗っ取られ、日本人は細々と集落に潜んで暮らしている。ある集落に訪れたレジ打ちを生業とする2人組。そのうちの1人は母親から譲られた「瑠璃色美術缶」を持っていた。この缶は失われようとしている日本文化をつめた缶で、日本人の富裕層が高額で買い集めているものだった。集落のリーダーはなんとかしてレジ打ちの持つ「瑠璃色美術缶」を譲らせようとするが……。
以前と変わらずワサビのきいた社会風刺を笑いと人情でくるんだ秀逸なストーリー。ゲストを含め、達者な演技の役者たちがテンポよく演じていて、6年のブランクを感じさせへん息のあったお芝居でありました。
私は今勤務校で芸術鑑賞会の担当をしていて、ちょうど来年度の「演劇鑑賞」をどの劇団のどんな芝居にするかで悩んでいるところなんやけれど、こういう芝居を見せたいんやなあ。でも、高校生向けに売り込んでくる芝居にはこういうものはないのね。まあ当たり前というたら当たり前なんやけれど。
というわけで、久々のお芝居を十分楽しんで帰ってきたのでありました。
夜は台風の影響で雨が降る甲子園からの野球中継を楽しむ。能見の完封、鳥谷のホームラン、森田の犠牲フライ。若手中心のオーダーで、カープのエース前田健に不調とはいえ黒星をつけたんやから、来シーズンに向けて楽しみが増えた、というわけで、今晩は心地よく寝られるぞう。
劇団関係者は気まぐれ? [演劇]
今日は2つの劇団の方が来はった。ひとつは午前中に約束してた劇団の方で、3年前にごたいそうな演劇論をぶって辟易させてくれた人物。断る理由がないのでお会いしましたけど、今回も「子どもにこびない本物の演劇を」と内容についてえんえんご高説を賜りました。いやまあええけど、いくらくらいでいつごろになんて実務的な話は一切しないところが、なんとも。
夕刻に予定を入れていた劇団は、実は今年一番話を聞いてみたかったところ。こちらの会議の都合もあるので、会議がのびた時のことも考えて少し遅めに時間を設定。むろんあちらさんの時間の都合もそれに合うていたので、お話を聞くのを楽しみにしていた。
ところが、間が悪いというのか、会議が予想よりも早く終わったというのに、会われなんだ。なんと予定の30分以上も早く到着され、会議終了を待ち切れずに資料だけ置いて帰ってしまわはった。なんというか、アポというのは会うために取っているのではないのかね。
芸術鑑賞の担当になって3年になりますが、一番困るのは実は演劇関係者なのですね。教員も世間知らずといわれることが多いけれど、そう思われんように努力はしているのですよ。ところが、演劇関係の方の多くはアポなしで飛びこんできたり芸術論をぶってみたりアポを取りながら勝手に帰ってしまったり。演劇関係者のすべてがそうやとは申しません。けどね、やはりそこそこの大きなお金が動くんやから、実務的なことをきちっとできるところといっしょにお仕事をしたいと思うのですよ。それだけになんか自分本位で気まぐれな劇団さんとは、いくら芝居の内容がよくても契約したくないなあと思うた次第であります。
日本芸能再発見の会 水口一夫さん [演劇]
今回はその「上方歌舞伎塾」の3期6年間の成果の話や、関西在住の歌舞伎役者の置かれている状況など。いわゆる「上方歌舞伎」がなかなか思っていたように再興していっていないことが水口さんにとってはかなり口惜しいということが言葉の端々から伝わってきました。
私も歌舞伎を見に行くということはないので、なんとも言われへんのですが、こういう伝統芸というのは、継承させていくだけでもなかなか大変なんやから、その上に昔日の栄光を取り戻そうというならばよほどの「天才」「スター」が登場せんと難しいんやろうなあと感じた次第であります。
昨日は休日出勤のあと、夜に「再発見の会」の本会と飲み会。今日は「たちよみの会」の例会と、休日にしっかり休みを取り切ることがでけなんだ。せめてなるべく早寝をして明日に備えなあかんなあ。
とはいえ、半年ぶりに新野新先生たちと楽しくお話しできてええ気分転換になった。日常とは違う空間に入って刺激を受けるということは、ものすごく大切なことなんやと改めて感じた次第であります。
失礼な劇団 [演劇]
昨日、試験問題の作成など忙しい時間を過ごしていたら、いきなりアポなしの来客。玄関口に降りていったら、昨年、芸術鑑賞会の演劇選定の際に私に芸術論をぶっていった劇団のおっさんやった。何やらパンフレットを渡し、いかに自分らの劇団が自前の劇場のあるしっかりした団体かを説明し……。その間、私は作成中のテストのことが気になっていらいらいらいらいら。
どんな素晴らしい劇団かしらんけれど、約束もなしに訪問してきて人の貴重な時間を奪うような失礼なところの芝居なんか見たくもないわい。
来年度もアポなしでくるようやったら門前払いをくらわしたるねん。
ここであえて公開しておきますが、その失礼な劇団は「風」という東京を本拠にしたところであります。
関西芸術座「ティーンズ・シャドー」 [演劇]
昨年芸術鑑賞の担当になってから、上演作品の選定から交渉、打ち合わせなどを何度も行ってきただけに、やっと当日がきたかと思うと感無量であります。
内容は、定時制のボクシング部が舞台で、廃部寸前のクラブに女子が4名入部してきて、それぞれ家庭の事情やらいろんな問題を抱えながらボクシング部に打ちこんでいくという筋書き。学校向けの芝居やから、たとえばつかみの部分にダンスや歌を入れてみたりとなかなか工夫(苦労?)してはる。
よくあるパターンの筋書きとはいえ、ボクシングリングを模したセットや、迫力のあるボクシングシーンなど、はじめて観劇をする生徒たちにも生の迫力が伝わるような作りになっていて、最初はざわついていた生徒たちも次第に集中して見るようになり、終演時には大きな拍手が起こった。
校長を楽屋に案内してあいさつしてもろうたり、演劇部の生徒を残してキャストの方と交流する場を設けたり、芝居がはねてもけっこう長い時間残っていた。もう一人の担当者の先生もよく動いてくれはって、私の及ばないところをきっちりフォローしてくれはって、なんとか成功裡に終わってよかったよかった。
1年以上かけてきた仕事が終わり、帰宅したらどっと疲れが出たけれど、タイガースがブラゼルの3打席連続ホームランなどで快勝し、気分は爽快。
さて、明日から気持ちを切り替えて日常業務に集中せねば。
尊大な演劇セールスマン [演劇]
一応候補は絞り込んでいる段階なんやけれど、話を聞いて面白そうやったら候補に加えてもええと思うたんです。
芝居はブレヒトの台本。劇団氏は「新劇のブレヒトはイデオロギーを前面に出すから“ブレヒトはつまらない”といわれるが、うちは違う」と力説。そんなに面白くブレヒトの芝居を演出してるんかと思いながら話を聞く。聞いているうちに「なんか違う」と思いはじめた。あまり面白そうやないんですわ、その説明。
なにをもって「面白い」と感じるかは人によるけれど、私は「観客に喜んでもらいたい」というところを重視する。小説でもそうで、「読者に喜んでもらいたい」という思いとそれを表現できるテクニックのバランスが取れているものやないと、楽しめん。
劇団氏の話からはそれが伝わってこなんだ。物語のあらすじを熱く語ってくれるんやけれど、その話のどういうところを特に強調したいのかが伝わってこない。私の心の中では「どう断ろうか」という思いが強くなってきた。
自分の話を聞いたら、無料の下見会にすぐにでも行きたくなるという自信を持っていたらしい劇団氏は、乗り気やない私の気持ちを察知したんか、「生徒に見せたいものが私たちと違う方には資料をお渡ししても仕方ありませんな」と自分から言い出し、怒ったように帰って行った。別に頼んで来てもろうたわけやなし。なんか後味が悪い終わり方やった。
そのあと、なんで私はこんなに乗り気にならなんだか、よう考えた。
わかった。
話のすべてが上からの目線やったのですね。「私たちの作品は商品じゃないんです」なんていうのね。それやったら無料でやってくれるかというとそうやない。商業演劇みたいにただただ観客を楽しませるということを追求するわけやない芸術なんやということか。
某劇団は東京の劇団で、劇団氏もそちらの方らしかったけれど、大阪の高校に売り込みに来るのに「商品じゃありません」はまずいというのがわからんのかな。つまりそれは金を払うて見るだけの値打もないもの、という風にもとられまっせ、ということ。「芸術作品を見せてやる」やなく、「お芝居の楽しさを知ってもらいたいから見てもらう」やないとあかんのですよ。
そんな偉そうなもん、見たないわい。そう思うたから心が動かなんだんやろうな。
相手を怒らせたらしいのでちょっと対応まずかったかなと気に病んだりもしたけど、それに気づいてやっと治まった。というか、劇団氏の言葉の裏に見え隠れする尊大さに対して不快感が募ってきた。
東京方面やと「芸術性の高さ」ばっかり強調したら、担当者は「へへーっ、ありがたき幸せにございます」とすぐさま下見に行くんやろうか。
まあ、劇団氏も運が悪かった。なにしろこちらは「どうせならほんまの吉本新喜劇を生で見せてやって、笑いに体を張る役者たちの迫力を生で楽しんでほしい」と思うたりするような担当者ですんでねえ。
森光子さんに国民栄誉賞 [演劇]
国民栄誉賞に関しての私の認識は「漫画化では長谷川町子さんはもらえるけれど手塚治虫さんはもらえない」というまことに不可解な賞やという、まあそんな感じです。生きてはるうちにやなせたかしさんと水木しげるさんにはあげときや、太郎さん。
「放浪記」2000回上演の記録を区切りに賞を出すことにしたらしい。で、各ニュースサイトの森光子さんの紹介文を読んだけれど、宝塚新芸座の舞台「漫才学校」や朝日放送のテレビコメディ「ダイラケのびっくり捕物帳」などに出演していたが、菊田一夫が大阪から東京に引っこ抜いた、なんてことを書いているものはほとんどなしやなあ。
「時間ですよ」やとか「3時のあなた」の司会やとか、東京に行ってからのことは書いてある。大阪時代のことなんか全く知らん不勉強な記者が多いのか、大阪時代のことなんかどうでもええのんか。もちろん私は森光子さんの大阪時代のことは知らん。生まれてへんもんね。そやけど、森光子さんのことをちゃんと調べたら、その芸の基礎は嵐寛寿郎さんの映画出演や宝塚新芸座での芝居やダイマル・ラケットさんに鍛えられたところにあるというのははっきりしている。それだけに、大阪時代がなかったことになってるみたいなのはなんか釈然としませんな。
「日本女子野球最後の日」観劇 [演劇]
今日は秋山シュン太郎さんがプロデュースするお芝居、「日本女子野球最後の日」を見に「一心寺シアター倶楽」へ行く。
本作にも出演している北野勇作さんから事前にチラシをいただいていたのですけれど、出演者の中に気になる名前を見かけていた。「神能友加」という名前の役者さんで、実は、2年前に私が教えていた生徒の中に同姓同名の人がいるのですね。珍しい苗字やから、おそらく同一人物やと思うんやけれど、高校在学時は演劇部に入っていたわけでもないしねえ。
というわけで、それを確認するためにもいかねばならん公演やったわけです。教え子がお芝居をしてたりするのって、しかも自分がいつも見に行く劇団の人たちといっしょに出演していたりするなんて、なんか嬉しいのですよ。
今日は楽日やとはいえ、いつもの公演とは違い立ち見も出る満員状態。私と妻は座布団をお借りして階段状の通路に座れたけれど、客席とは違い、見にくいのは見にくい。なんでこんなにお客さんが多いのかと思うたら、「発起塾」という秋山さんが主宰する50歳以上の人たちを対象にしたミュージカル教室の人たちがたくさん出演してはって、そちらの関係者の方たちが多かったようです。
お芝居は、戦後実際にあった女性のプロ野球リーグを題材に、決着のつかなかった試合を50年ぶりに行うという内容。神能さんは野球選手の役。北野さんは彼女の所属するチームのオーナー役。タップダンスありジャズダンスありととにかく踊る踊る。一心寺シアター倶楽の舞台いっぱいに多数の(野球チームやから最低でも9人はいてるわけです)役者たちが踊りまくるわけですから、そらもう圧巻。
ビッグネームでは上海太郎さんが出演し、野球少年がやがてプロとなり事故で引退するまでを無言の一人芝居で表現。カーテンコールではマイムも少し見せてくれた。
やっぱりすごかったのは「発起塾」の年配の方々でしょう。70代の方もいてはるのに、孫ともいうべき若い役者さんといっしょに踊ったりするんですからね。芝居も素人くささは残っているとはいえ、なかなか達者なもの。多くの方は、第二の人生を充実したものにしようと参加してはるらしいけれど、いやあお元気ですねえ。
というわけで、今回も楽しませてもらいました。帰りに神能さんに声をかけたら、私のこともちゃんと覚えていてくれた。嬉しいものです。高校時代よりもずっとええ顔してたよ。