させていただく

　ここ数年気になっている言葉がある。
　それは「させていただく」という謙譲表現であります。別にへりくだる必要のない時にまで「させていただく」が多用されてますよね。何もあなた、私に許しを請う必要はないやないか、というような気になってしまう。
「本日、司会をつとめさせていただく喜多でございます」。
　いやいや、司会をするのにそんなに卑屈にならんでもよろしい。胸を張って「司会をつとめます」でええやないですか。
「部屋に入らせていただきます」。
　部屋に入る許可がほしいなら「入ってよろしいですか」でよろしいやないですか。まるで部屋に入るのは礼を失しているみたいですぞ。
　いつから「させていただく」が当たり前に使われるようになったのかようわからんけれど、「申し上げる」という表現があるのに「言わせていただく」なんて使い方をされると、なんかいらっとくる。
　敬語は難しい。謙譲表現は特に難しいのかもしれん。そやけどどんな言葉にも「させていただく」をくっつけるだけで謙譲表現になる。それが手軽なんで、「させていたたく」が乱用されるようになったのかもしれんな。そして、別にへりくだる必要のないところでも「させていただく」をつければよりていねいな物言いになったと勘違いしてしまうのかもしれん。
　とにかく、使わんでもええところで「させていただく」がくっつくと、なんか逆に見下されているような気分になってしまうのですねえ。「させていただく」の多用はやめようよ、と提案させていただきます。

コメント 5

私は「思います」というのが気になります。
「ただいまより、会議をはじめたいと思います」
なぜ、「ただいまより、会議をはじめます」
と、いわないのでしょうか。
これは、「会議をはじめたいと思います」
と、みんなの同意を求めてるのでしょうね。
で、みんなが異議を唱えないと、会議を始める、それで不都合がおきても、みんなは私の「思います」に同意した、私一人の責任ではない、ということでしょうかね。
by 雫石鉄也 (2017-11-08 08:52) 

同感です。いつの間にか定着してしもうたみたいでホンマに腹がたちます。芸能人や政治家がやたらに使うので浸透してしもうたんかなあ。この前の選挙でも立候補させて頂きますというてる奴が多かったですなあ。銀行の窓口で｢お名前よろしいでしょうか｣て言われたら、手続きやめよかなあてな気になりますわ。
by 承服亭すまん (2017-11-08 18:10) 

　テレビの影響というのは大きいでしょうね。
　「させていただく」にしても「思います」にしても、直截な言い方を避けるための手段、ということになるのでしょうか。
　あまりいい感じはしませんね。
by t-kita (2017-11-09 00:19) 

わが記憶では、「させていただきます」が一躍有名になったのは、2004年10月29日、松坂大輔の婚約発表の記者会見です。
松坂大輔「このたびナントカさん（女子アナ）と結婚させていただくことになりました」
テレビで見て爆笑。
「させていただいた」時の感激が記憶にあったのだと想像いたしました。
以来、私も「コメントは控えさせていただきます」などと書くことがありますが、明らかに上から目線で、本音は「これ以上ごちゃごちゃいうのは勘弁しといたるわ」ですからね。

by 堀　晃 (2017-11-09 04:19) 

おお、松坂大輔が火付け役でしたか。
「結婚させていただく」は確かに笑わしてくれますね。
敬語をくどいくらいしつこく使うのは、あてこすりの効果があることは、京都生まれの京都育ちである私にはよくわかります。
ほんま、京都人が相手を見下すために使う敬語はえげつないですから。
by t-kita (2017-11-10 00:26)