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暗号名グリフィン [読書全般]

 今日は定休日。
 ここ数日の疲れもあり、朝はゆっくり目に目覚める。たまっていたアニメの録画は、時間の許す限り見る。どうしても面白い、続きを見たいというものから見ていくので、特に見んでもええか、というものが残っていくということになるから、途中で見るのをやめるものがはっきりしてくるから、これもまた良いのかも。
 昼食後はすぐに午睡。夕刻起きて、日帰り帰省の妻を見送った後はひたすら読書。今日はタイガースの試合はもとからないので、読了後も次の本にとりかかり、読み始めたら止まらん。妻の帰宅後、夕食。食後も読書の続き。少しは疲れが取れたかと思うけれど、まだ体はだるいなあ。
 アーノルド・クラミッシュ/新庄哲夫・訳「暗号名グリフィン 第二次大戦の最も偉大なスパイ」(新潮文庫)読了。クラシックファンの友人とLINEでやりとりしている時に紹介してもろうた本。ハンス・ロスバウトという戦中戦後に活躍した名指揮者がいる。大手レーベルへの録音が少ないので、同時代のカール・ベームやオットー・クレンペラーといった指揮者ほど知名度は高くないけれど、残された録音を聴くと、マーラーの演奏など、今も人気のある同時代の指揮者に勝るとも劣らない実力の持ち主。ナチス・ドイツで勲章を貰うたりしているから、そんな理由で大手レーベルから声がかかりにくかったのかもしれん。ところが、その弟、パウル・ロスバウトは反ナチの科学者として、ナチス・ドイツの原爆研究を阻止し、多くの情報を英国に流したりして、ナチス・ドイツの崩壊を早めたスパイやったという。ただし、あまりにも歴史の暗部に関わり過ぎていたのと、自分の利益のためにスパイをしていたわけでなかったため、その行動はほとんどしられてへん。著者は米国の科学ジャーナリストで、パウルの果たした役割を重要視し、存命であった関係者や、パウルが兄ハンスに送った手紙など限られた資料からパウルの活動をもとに、第二次大戦中の科学者たちの動きを克明に探っていき、原爆開発の裏に隠された秘話を明らかにしていく。パウルが情報を流すときに使用したコードネームは「グリフィン」。神話に出てくる神獣である。本書では、戦後にドイツの科学者たちが免責のために語った嘘なども暴きたてられる。そして、ナチス・ドイツの原爆開発のための要地が北欧であったことなど、あまり知られていない重要なポイントも綴られる。ほとんど証拠の残っていない事柄や、証言があやふやな事柄などを綿密に調査してまとめあげた著者の功績は大きい。読んでいる間は、兄のハンスが残した録音を配信で聴きながら、パウルという人物がどのような人であったかを想像していた。なにしろ歴史の陰に隠れた人物だけに、その人物像も本書ではなかなかはっきりと浮かび上がってこないもので。しかし、科学者だけでなく、芸術家や軍人など、科学雑誌編集者として出発した経歴から人脈の広げ方など、本職のスパイも顔負けという人物やったみたい。本来ならナチス・ドイツは隠しておきたかった科学的な発見なども科学雑誌で全世界に紹介するなど、単なる情報を売るというだけでない手法も興味深い。あまりするすると頭に入ってきにくいところはあるけれど、歴史の表面に顔を出すことなく戦後ひっそりと病死した一人の「英雄」の存在をここまで記録として残した著者の功績は大きいと思う。

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