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川上哲治の死 [追悼]

 職場で調べものをしている時にニュースサイトをのぞいたら、元プロ野球選手でジャイアンツ監督やった川上哲治さんの訃報 に接する。享年93。死因は老衰。まさに寿命を全うしたと言えるんやろうな。
 もちろん私は川上さんの現役時代の姿を知らない。ビデオで見る打撃フォームは自然体で柔らかいフォームから鋭いスイングをしていて、時代を代表する打者やったんやなあと実感させてくれた。
 とはいえ、私が「川上監督」の名を知ったのは漫画「侍ジャイアンツ」でやし、私がタイガースファンになった1973年ごろには「タイガースの優勝を阻止した憎いおっさん」でしかない。「打撃の神様」「弾丸ライナー」「赤バット」「テキサスの哲」「哲のカーテン」「野沢のおっさん」などなど二つ名の多さではプロ野球史上記録に残る人物であることを知ったのは、それよりずっとあと、野球史に関心を持っていろんな本をむさぼるように読むようになってからであります。あ、「野沢のおっさん」は、長嶋監督が最初に解任された時に言うたとされる悪態やから、二つ名とは言えんか。南海時代の野村監督が「鶴岡元老に吹っ飛ばされた」発言をしたのと並ぶ悪態でありますね。
 こんなに評価の分かれる監督は珍しい。9連覇という偉業を成し遂げたその手腕を高く評価する声と、その冷徹な采配に対する批判が真っ向から対立する。ただ、他の監督と比べると人間味あふれるドラマが少ないのは確かやなあ。同い年の「悲劇の名将」西本幸雄さんや「猛牛」千葉茂さんとは好対照であります。
 とはいえ、NHKの解説を聞いているとなんや好々爺という感じやったし、その解説を聞いてうーむとうならされるような深い野球観を味わわせてくれたというわけでもなかった。おそらく自分の考えをうまく口にできるタイプの人やなかったんやろうなあ。評価が分かれるのもそこらあたりに由来するものなんやろう。
 ただ、敵は憎らしいほど強い方がよろしい。タイガースファンである私にとってはまさに「ジャイアンツ」の権化、いやいや象徴という監督やったことだけは間違いがない。愛すべきキャラクターとして国民的な人気者である長嶋茂雄さん(私は好きになられへんけれど)との対比で見ても、やはり敵役にまわってしまう。そこらあたり、気の毒な役回りを演じさせられるお方やったんやろうなあ。
 希代の名選手、名監督であったことは間違いない。ジャイアンツ以外のユニフォームを着なかったという点では、実は長嶋さん、そして原監督と共通するところがあるんやなあ。
 謹んで哀悼の意を表します。

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コメント 8

雫石鉄也

川上哲治氏については功罪ありますが、私は「罪」の方が大きいと思います。
プロ野球をつまらなくした元凶が川上だと思います。
0対0.ノーアウトランナー1塁。ハンで押したように送りバント。
確かに川上の野球はファンに確実に勝利をもたらしてくれますが、面白くない。
アマ野球なら、面白さを度外視して勝利を求めればいいです。しかし、プロ野球です。娯楽です。面白くなければ娯楽ではありません。確かに、ひいきのチームが勝つことが最大の娯楽という人もいるでしょう。
でも、私は、つまらない勝利と、面白い敗北を比べれば、面白い敗北を取ります。もちろん、面白く勝ってくれればいうことはありませんが。
by 雫石鉄也 (2013-10-31 10:02) 

t-kita

当時のジャイアンツファンは「勝つこと」と「強いこと」を同一視していたのでしょうね。ほんとに強いチームは10点差で負けていても「そろそろいこか」と誰かが言うと、ほんまにひっくり返してしまうようなチームやないかと。
私は記録でしか知りませんが、1950年代の西鉄ライオンズや南海ホークスがそういう「強いチーム」やったみたいですね。
そして1985年のタイガース。
あの年だけは奇跡的な1年やったとしか言いようがないですね。
by t-kita (2013-11-01 00:14) 

高井 信

「強い者が勝つのではない。勝った者が強いのだ」と言ったのは確かベッケンバウアーでしたっけ。けっこう真実をついていると思います。
>ほんとに強いチームは10点差で負けていても「そろそろいこか」と誰かが言うと、ほんまにひっくり返してしまうようなチームやないかと。
 それは「強い」というより、「桁外れに強い」というか、もはやマンガの世界ではないでしょうか(笑)。まあ、プロ野球のチームが中学生の野球大会に参加すれば、それも可能とは思いますが。
by 高井 信 (2013-11-01 23:13) 

t-kita

2リーグ分裂前の大阪タイガースのダイナマイト打線が「そろそろいこか」というような感じでぼかすか打って観客を楽しませていた近藤唯之さんの「阪神サムライ物語」で読んでいたので、私の中では「強いチーム」というとそんなイメージがあるのですね。
1985年、真弓、バース、掛布、岡田らの「新ダイナマイト打線」もあの年だけはそれに近いものがあったようです。豊田泰光さんの文章では1950年代の西鉄ライオンズもそんな雰囲気があったとか。
そういう「桁はずれに強い」チームが実際にあったわけですから。
もっとも、私の年齢ですと、長嶋さんは最晩年でゲッツーばかり打っている場面しか記憶にないのですね。そういう意味では、V9時代のジャイアンツの強さの質というのを体感してないですから、あまり偉そうに言えたものではないのですけれどね。
私がテレビや球場で見たチームで「強っ!」と感じたのは福元さんや山田さん、加藤秀さんの頃の阪急ブレーブスと、「新ダイナマイト打線」の年の阪神タイガースですかねえ。
by t-kita (2013-11-02 00:02) 

高井 信

 あくまでもイメージや印象であって、実際に10点差を「そろそろいこか」でひっくり返すなんて、やっぱりマンガとしか思えません。
 ちょっとネットで調べてみましたら、「プロ野球で逆転の最高得点差は10点で、過去に3度」とありました。、
http://members2.jcom.home.ne.jp/s_satomi/essay.htm
 喜多さんの挙げられているライオンズ、ホークス、タイガースは一度もなし。
 やはり、10点差は言い過ぎでは? 5点差くらいなら、私もそういうことが多かったチームもあるかな、と納得できるのですが……。それにしたって、そんなに数多くはないと思います。 
by 高井 信 (2013-11-02 07:58) 

t-kita

なるほど、データを出されると、私もオーバーに書きすぎたと首を垂れるよりありません。
本意としては「勝つチーム」と「強いチーム」とは違うと思っていることを伝えたかっただけなんですね。
例えばタイガースでいえば2005年のタイガースはJFKのリリーフで優勝しましたが、「強い」とは実は思ったことはありませんでした。そこらあたりのニュアンスを伝えるのって、難しいですね。
by t-kita (2013-11-02 23:56) 

高井 信

 言いたいことはわかります。ただ、挙げた例があまりにも絵空事だったので、つい……。
by 高井 信 (2013-11-03 09:09) 

t-kita

いえいえ、こちらこそわざわざ検索させたりとお手間を取らせ申し訳ございませんでした。
by t-kita (2013-11-04 00:21) 

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