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熊と小夜鳴鳥 [読書全般]

 今日は定休日。昨日までよくがんばったので、安心して休める。
 午前中は今週ためていた録画番組をまとめて見る。かなりたまっているので、全て、とはいかず。ずっと見続けていると頭が疲れる。
 昼食後、少し読書をしてから午睡。夕刻、社説のダウンロードなどをしてから夕食。食後はまた寝床で読書など。昨日まで根を詰めて仕事をしていたんで、かなり疲れていたということがわかるなあ。
 キャサリン・アーデン/金原瑞人、野沢佳織・訳「熊と小夜鳴鳥 冬の王1」(創元推理文庫)読了。久しぶりに本格ファンタジーが読みたくなり、三部作完結を機に一気に読んでしまうことにした。舞台は14世紀半ばのロシア。まだ「タタールのくびき」から脱していない時代。それでもモスクワ公国が勢力をのばし、ロシア各地にキリスト教が広がっている。主人公は地方領主の末娘、ワーシャ。彼女は土着の精霊たちを見ることができ、話しかけたりもできる。亡くなった母の年の離れた妹アンナが後妻として父に嫁いでくるが、彼女も精霊を見る能力を持っていた。しかしアンナはモスクワで育ち敬虔なキリスト教信者やったから、精霊たちを悪魔と恐れ、ワーシャともことごとく対立する。モスクワから送られてきた司教コンスタンチンは、ワーシャを恐れながらもいつしか魅かれていく。精霊たちはコンスタンチンが領民たちに徹底的に土着の精霊信仰を捨てさせたため弱体化し、そこにつけこんだ「熊」と呼ばれる精霊が村を滅ぼそうと現れる。ワーシャは「熊」の兄である「冬の王」の力を得て、この危機を乗り切ろうとするが、アンナやコンスタンチンの妨害もあり、孤独な戦いを強いられることになる。
 米国生まれの作者がロシアのおとぎ話などを土台に、勇敢な少女の孤独な戦いを描き出す。これはただの寓話ではなく、宗教戦争の側面も持つように感じられた。土着の信仰を駆逐していくキリスト教は、主人公から見た宗教的侵略者であり、彼女は自分に見えるものをただ信じて戦うしかない。コンスタンチンが聞いた「神の声」は何か、が本書のキモ。信仰というものが自己顕示欲とつながるとどうなるのかなど、現代の作家らしいアプローチを取る。物語には区切りがついているけれど、村から追い出されるように旅に出るワーシャ、そして「冬の王」の真意がどこにあるのか、続きが気になる。ワーシャの勇気は読み手に希望をくれる。一見孤独であるように見えながらも、彼女が信じ続けてきたものがその味方をしてくれる。そのあたりの描写も非常に丁寧に描かれている。ハイ・ファンタジーではなく、現実の歴史と絡み合うようにして展開する物語というのも興味深い。続巻では旅に出るワーシャの姿が描かれる。どのような旅になるのか楽しみになる幕開けやね。

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