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佐藤さとるの死 [追悼]

 今日は一日入試準備に追われ、自分本来の仕事はほんの少ししかできず。現任校に転勤して初めて1時間以上の残業をした。帰宅したらもうぐったり。こんなんで入試本番は大丈夫なんかなあ。
 夜、ネットニュースで児童文学のファンタジー作家佐藤さとるさんの訃報 に接する。享年88。死因は心不全。
 あれは小学校中学年くらいの頃やったか。従弟の家で「だれも知らない小さな国」を読ませてもろうた。一気に読んでしもうた。せいたかさんとこぼしさまたちの交流、せいたかさんとおちびさんの愛情、それらが生き生きと描かれていて、「矢印の先っぽの国」と彼らの呼ぶ「コロボックル小国」がほんまにあるような気がした。
 続編が出ていることを知ると、誕生日やクリスマスに続きを親に買うてもらい、夢中になって読んだ。コロボックルや管狐などの伝承を、現代によみがえらせ、しかもそれは現在やと伝奇的な物語になるやろうに、日常の中にとけこんだ物語として、お話好きな子どもの心をつかんだ。
 今は、ゲームやラノベなどでファンタジーはあたり前のように書かれているけれど、それはC・S・ルイスやトールキン、あるいはハワードなど海外の作家の影響を受けたものが多く、コロボックルたちの物語のように日常生活の片隅にひそむもうひとつの世界というようなものはほとんどない。
 日本独自のファンタジー小説として、そして何代にもわたるクロニクルとして、佐藤さんの作りだした世界は他のだれにもまねのできないものやないかと思う。佐藤さんのつくりだした日本独自のファンタジーは、残念ながら日本におけるファンタジー本流にはならなんだけれど、それだけに貴重なものやと思う。
 今でも、視界の片隅で何か影が見えたら、それは小人やないかなんて思うてしまう。ええ歳したおっさんが、その時一瞬子どもに戻る。ああ、あのころ、ほんまにコロボックルがいて、自分も友だちになりたいと、そう思うていたなあ。
 謹んで哀悼の意を表します。

 今月の「たちよみの会」例会は、都合により休会といたします。もし予定されていた方がいらしたら、すみません。また3月にお会いいたしましょう。

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