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テントの死 [追悼]

 今朝、スポーツ紙の芸能欄を開いてびっくり。芸人テントさんが自動車事故死 の報。享年65。
 めったにお目にかかれないという意味で「ツチノコ芸人」なんて呼ばれかたをしていたけれど、まあ唯一無二の芸の持ち主でありました。
 ずっと前、フレッツADSLのコマーシャルで天海祐希の横に立って「ギョギョギョ」としか言わんけったいなリアクションをしてた人、といえば思い出す人もいてるか。
 シンガーソングライターといえば聞こえはいいけれど、独特の不思議な歌を披露して見たり、両手をからませて「人間パチンコ台」やとか「蜘蛛の決闘」なる珍芸を持ちネタにしてたり。それ以外に持ち芸ってあったんかいな。
 つかみどころのない芸風、好きやったなあ。
 師匠は上岡龍太郎さん。二代目襲名という話もあったらしいけれど、断ったとか。師匠としたらもっと売れてほしいから話題作りという意味もこめて持ちかけたんやろうけれど、あまりにも芸風が違い過ぎるから断って正解やったと思う。テントさんはそういう芸名の芸人やなく、テントという名の生き物やったんやないか。
 むろん「テント独演会」なんてビデオがあるわけやない。ただ、師匠の実子である映画監督の小林聖太郎さんが大のお気に入りで「かぞくのひけつ」や「毎日かあさん」などで起用していた。特に「かぞくのひけつ」では怪しい漢方薬店の主人役で出演し、セリフを言いながら「蜘蛛の決闘」をやってみせたり、自作の歌をえんえん歌ってみせたりしてて、ラストシーンではテントさんの歌声で締めたりしていた。そういう形であっても、テントさんの芸風をちゃんと記録したものが残っているのはありがたいことです。前任校では授業でこの映画を生徒に見せたりしてたけれど、あの時の生徒たちはこの訃報に気がついているやろうか。
 好きな人はもう大好きなんやけれど、わからん人には一切わからん。うまいんだか下手なんだか見当がつかん。こういう存在はこの人だけやろうなあ。理屈とか売れるとか人気とかそういうものを超越した珍にして奇なる稀な芸人で、こんな形で突然亡くなってしまうとは。なんとも残念というか。
 謹んで哀悼の意を表します。

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