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半村良の浅草 [読書全般]

 愛すれどTigers「ドラに連敗も巨投に投げ勝つ」を更新しました。

 毎日「鬼平」ばかり読んでいても何なので、この前の「たちよみの会」の時に購入した、半村良「小説 浅草案内」(ちくま文庫)を読む。新潮文庫から出て絶版になっていたものの復刊。北海道から浅草に居を移した半村さんが「浅草」という土地とそこに住む人々を点描した連作集。
 これという事件が起きるわけやない。けれど、半村さんならではの人間観察眼で、べたべたもせず、突き放しもしない江戸っ子気質の残る「粋」を描き出している。
 この味わい、久しぶりに感じたなあ。「鬼平」も江戸情緒を描いているんやけれど、どうしても何か事件が起きてそれを解決するという劇的な要素は欠くことがでけん。それはそれでおもしろいんやけれど、半村さんの人情物はまた一味違うのね。何気ない日常を「根なし草」と自称する半村さんの視点から淡々と描くことで、なんともいえない滋味豊かな世界が広がっていく。
 若い頃「ああこれが大人の世界なんやなあ」なんて思うて読んでた半村人情物を、おっさんになって読んでみると、大人の関係の内側に残る子どもっぽさなどが透かし彫りのように浮き出てくるのが見えてきた。
 この調子で、もっともっと復刊してくれんものか。こういう味の小説が絶版になっているのはほんまにもったいない。

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