SSブログ

ゲームの王国 [SF]

 今日は平年並みに冷える。ときどき雨がぱらりぱらり。
 ついに3年生の考査最終日。彼らは明日からもう春休みや。ホームルームで教室やロッカーの片づけをしたあと、総合学習の1分間スピーチの補講を行う。事情で休んでいた生徒に機会を与えねば不公平になるということで初年度から始めた。無事終了し、あとは成績をつけるのみ。
 午後からはいよいよ本格的に成績つけを始める。雑事が多く手をつけてなんだ提出プリントの評価をばしばしとつけていく。1科目分は終了し、エクセルで計算して最終の評価を出した。残りは週明け。定時に退散。
 帰宅後はしばらくのびていました。けっこう根を詰めて成績つけをしていたし、かなり疲れたね。夕食後は妻と録画してあったアニメを見たりして過ごす。
 小川哲「ゲームの王国 上・下」(ハヤカワ文庫JA)読了。SF大賞と山本周五郎賞の同時受賞作。文庫化されたのを機にやっと読む。上巻は第二次大戦後の独立カンボジアを舞台に、ロン・ノル政権の圧政、クメール・ルージュによる革命の様子が綿密に描かれる。そして、主人公と言うべき少年少女が混乱の時代に何とか生き延びていき、その周辺の人物が様々な動きを示す。下巻では、大人になった主人公たちが近未来を舞台に、少女は政治家として、少年は大学教授として、それぞれの立場から対立する。自分がカンボジアのトップに立つために多くの者の命を犠牲にした女性、ソリヤ。ゲームの開発を通じて人々の脳波に働きかける研究を進める男性、ムイタック。互いの存亡をかけたゲームでの対決が始まり……という展開。上巻は史実をもとに架空の登場人物たちを織りまぜながら、本格的な現代史小説という趣なんやけれど、下巻で近未来で成長した主人公たちが戦うというSF小説に変化する。その変化に無理がない。混乱の時代を生き抜く中で、それぞれ聡明な頭脳を持った少年少女が学んだことが土台にあるから、下巻でのゲームでの戦いという展開にもリアリティがある。ソリヤが作ろうとするのは一定のルールの中でしか人がいきられない「ゲームの王国」やし、ムイタックはそんなソリヤの野望を危険とみなして対抗するけれど、根底には子ども時代にともに興じたゲームの記憶がある。敵であり、友である。そこらあたりの人情の機微というやつが綿密に描かれているから、ジャンルを超えて高い評価が得られたんやろうと思う。私が興味を持ったのは、ロン・ノル政権時代に秘密警察の警官やったラディーという男。ポル・ポト時代を生き延び、ソリヤの参謀として再登場するというしぶとさ。革命の村で実権を掌握していくしたたかさや、何度も命を狙われながらもしたたかに生き延びる生命力。主人公たちの運命に、必ずどこかでからんでくる男。この人物の存在が、物語を大きく動かしていっているんやないか。主義主張よりも自分の権力欲、生存欲というこの人物の存在があるから、理想と現実と仮想のはざまで対立していく主人公たちの戦いが生きてくるんやと思う。力作、傑作。いやあ、デビュー2作目でこんなすごいのをかけるんやから恐れ入りました。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ: