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平井和正讃 [SF]

 今日は完全休養日。例によって午前中はテレビを友とする。昼食前、少し寝る。昼食後に午睡しようと思うて布団にもぐりこむけれど、眠気が起こらず。読書に切り替える。
 日下三蔵・編「日本SF傑作選 4 平井和正」(ハヤカワ文庫JA)を読了。「虎は目覚める」「悪徳学園」「エスパーお蘭」「星新一の内的宇宙」などの初期短編と長編「サイボーグブルース」を収録。初期短編は平井さん自ら「人類ダメ小説」と名付けていたそうやけれど、怨念と暴力のパワーがみなぎり、人類に対する絶望感などは全く感じられなんだ。20代に書かれたものがほとんどということで、若さにまかせて叩きつけたというような筆致が目を引く。人類そのものに対する絶望感は眉村卓さんの方が深いんやないかと感じた次第。
 初期の短編はほとんど読んでなかったので、非常に新鮮な印象が残った。人類がダメなのではなく、人間の利己的な部分を拡大して表現したということになるんやないかな。若い作家がほとばしるエネルギーを文章化していったらこうなるという見本のような作品が並ぶ。それだけに漫画原作者として活躍したあとに書かれた長編「サイボーグブルース」は一歩引いた視点から描かれており、絶望しているようで何か救いを求めているようなものが感じ取れた。
 結局平井さんはその救いを新興宗教に求めてしまうことになり、角川文庫版「幻魔大戦」あたりからは作風がからりと変わってしまうことになったわけで、そのことを知っている今、初期作品を読むと、なにやら痛々しい悲鳴をあげながら書いてはるように思えてしまう。そやけど、その悲鳴が作者の個性、魅力となっていたんやないか。そういう意味では新興宗教と平井さんの出会いは、SF界にとっては大きな打撃やったと改めて思うたのでありました。平井さんにとっては、どうやったんやろうか。

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