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関取になれなかった男たち [読書全般]

 例年やと3月の第1土曜は合格者説明会で休日出勤しているんやけれど、今年は行かんでもよい。これまでは奨学金の説明やら保健室関係の説明などをせんならんかったからね。今年は下っ端に戻ったんでご用はなし。
 そのかわり、月例の京都の医者行き。先月は新型コロナウィルス感染症が発症したため電話診療、薬は郵送。今月は診療代も薬代も2ヶ月分いっぺんに支払いということになりました。
 日中ぬくかったこともあってか、あるいはコロナの後遺症か、医者との往復もこれまでよりもしんどい。帰宅してすぐ午睡。夕刻起きてきてスマホをいじったり本を読んだり。夕食後妻と世界情勢について語り合う。嘘じゃありゃせんほんまじゃで。
 佐々木一郎「関取になれなかった男たち」(ベースボール・マガジン社)読了。幕下以下の相撲は面白い。三段目あたりやと、これから上を狙う若い力士と、ちゃんこ番が本業になってるような大ベテラン力士が対戦したりする面白さがあるし、幕下上位やともうあと少しで関取になる力士たちがあと1勝にすべてをかけてぶつかりあう。幕内上位の力士が三役になるよりも、十両上位の力士が幕内に上がるよりも、幕下上位の力士が十両に上がる方が難しいと言われるけれど、確かにそうなんです。幕下以下の力士は一場所7番しか取組がない。勝ち越したら大きく上がるし、負け越したら大きく下がる。15番取る関取たちは、負け越しても1枚下がるだけやったりするのに。
 本書の著者は日刊スポーツの記者。幕下筆頭まで行きながら、十両に上がれずに終わってしまった力士を6人ピックアップし、どういう状況で十両目前で阻まれたのか、関取になるのをあきらめて角界を去る決意をしたきっかけは何か。そして土俵から降りた後の人生はどのようなものか。6人6様の相撲人生を描きだす。番付は生き物というが、十両から陥落してくる力士が少なかったためにチャンスを逃したものもいれば、関取の引退届が番付編成のあとやったために空席ができずチャンスを逃したものもいてる。大横綱白鵬などは本来なら関取に上がれる成績やなかったけれど、公傷制度廃止に伴う関取の人数増加措置のおかげで幸運にも関取になれた。たぶんそれがなくてもすぐに関取になっていたかもしれんけれど、本書に登場する力士たちと同じ運命をたどっていたかもしれん。
 髷を落とした後、世話人として協会に残った人もいれば、料理の修業をしてちゃんこ鍋の店を開いた人もいる。マッサージ業で成功をしている人、トラックの運転手になった人。彼らには何が足りなかったのか。ほんのわずかなことが運を呼び寄せたり運から見放されたりする人間模様。なんとも奥が深く、味わい深い本だろう。幕内上位のことしか関心のない相撲ファンでも、いや、相撲に関心のない人でも、この人間ドラマにはいろいろと感じてもらえるはずやと思う。印象に残ったのはトラック運転手をしているもと緑富士の言葉。
「本当に俺は相撲をやっていたのかなと思うことがあります。夢を見ているような感じですよね」

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