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十日間の不思議 [読書全般]

 今日は動悸などは治まっていたので、普通に出勤。会議の記録係など、予定されていた仕事を無事こなす。午後からはもし来年持てたらええなという仕事のため、映像作品のDVDなどを検索したりする。他にしたい仕事もあったけれど、それは明日以降にまわすことにする。
 定時に退出し、帰宅後は少しばかりスマホで遊んだりする。食後は読書。適当なところで閉じるつもりやったけれど、一気に読んでしまう。面白い本というのはそう簡単に閉じられない。こういう感触、久しぶりやなあ。
 エラリイ・クイーン/越前敏弥・訳「十日間の不思議」(ハヤカワミステリ文庫)後期クイーンの傑作の新訳版。記憶喪失に苦しむ友人のため、クイーンは「災厄の町」であるライツヴィルを再訪。そこで友人の父の若い妻と出会う。そこでクイーンは友人が富豪である父親の養子であることや、父親の妻もまた歳の離れた夫の援助で育ったことなどを知る。さらに、友人と父親の妻が不倫関係にあったことや、その証拠である手紙が盗難され、二人が強請られているという事件に関わることになる。口止め料の受け渡しを手伝う羽目になったクイーン。早くこの町から離れたいと思いながらも、その推理力で殺人事件が起こることを予見するが……、という話。物語半分以上が友人とその家族の間に横たわる複雑に絡み合った感情や心理を描くことに費やされている。名探偵が事件に巻き込まれてしまい心ならずも盗難事件に加担してしまうなど、それまでのエラリイ・クイーンにはあまりない葛藤が綿密に描かれ、それが謎の真相の伏線になっており、しかも事件が解決されたかと思われたのに、さらに奥深いところに真相が隠されているという凝った作りに感嘆。
 ただ、私は事件解決の際になぜかクイーンが触れなかった部分があり、おかしいなあと気付いた時点で、二重に隠された真相に気づいてしもうた。「国名シリーズ」に見られるような隙のないトリックと謎解きと比べると、その点では若干甘い部分ではあるけれど、作者自身、わざとそうしたんやないかという気もする。本作は謎解きそのものよりも、エラリイ・クイーンという名探偵に人間らしい肉付けをする試みやったんやないかな。
 謎解きと、小説としての深みを両立させるために作者のクイーンたちはかなり苦しんだということが解説にて明かされているけれど、確かに本作はそれまでのクイーンの殻を破ろうという試みやったというのは読んでいて強く感じられた。ここで仕掛けられているテーマを書くとネタバレになるのであかすことはでけんけれど、ミステリ史上でも非常に恐るべき犯人やというにとどめておきます。新訳で再発売してもらえたのはありがたい限り。まだまだ絶版になってるクイーン作品は多数あるので、もっともっと復刊してほしいものです。

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