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藤田まことの死 [追悼]

 俳優、藤田まことさんの訃報 に接する。享年76。死因は大動脈出血。
 近年病のためによくテレビドラマを降板したりしていた。昨年の「必殺仕事人2009」ではさすがに迫力はあったけれどほとんど動きがなかった。だいぶ弱ってはるんやなあと思うた。
 私らの世代では「てなもんや三度笠」よりも「必殺仕置人」以降の「必殺シリーズ」で演じてはった中村主水のイメージが強い。高校生たちになると「はぐれ刑事」の安浦刑事の方がなじみがあるのか。先月、「なにわ芸能研究」なるけったいな授業で「てなもんや三度笠」のビデオを生徒たちに見せたところ、コメディアンとしての藤田まことさんを見て驚いたというような感想が多くみられた。クレージーキャッツの映画での植木等さんとのからみなんかを見せてやったらまた違う印象を受けるのかな。
 そうなんですよね。軽妙なコメディアンやったんですよ、藤田まことさんは。「まことまこと藤田まこと」なんてフレーズがあった。「あっ、きいてきたー」なんていう栄養剤のコマーシャルもあったなあ。
 「必殺シリーズ」では、そういう軽妙なコメディアンが夜になると裏稼業で殺し屋になるという、あのコントラストがよかったんやと思う。「必殺仕事人2009」では東山紀之さんに主役をバトンタッチする形になったけれど、もともと二の線の東山君ではそのコントラストが出ないんですわ。昼行灯の同心を演じていても、作ってるという印象をぬぐい切れなんだ。あれはやはり藤田まことさんならではの絶妙の配役やったんやと思う。
 テレビプロデューサー山内久司さんのお話を「日本芸能再発見の会」で聞いたときに、藤田まことさんを「必殺仕置人」に起用した時のエピソードもあったなあ。必ず主水の家でのやり取りの場面で番組を終わらせるのは、視聴者が「殺し」という非日常から「むこどの!」という場面で日常にすっと戻れるようにするという意図やったそうです。
 私は「必殺シリーズ」のどの中村主水がええかというと、「暗闇仕留人」の頃かなあ。全体に暗いトーンの番組で、その中に藤田まことさんの軽妙な演技が入るとぐっと引き立っていたのですね。
 そういう意味では他に代え難い存在感の俳優さんやったと思う。「必殺仕事人」の頃、南座の舞台で「必殺」を見たことがある。藤田まことさんが袖から登場すると、ぐっと舞台が引き締まったような感じがしたのを覚えている。船頭の役でいとし・こいし師匠が出演していて、藤田さんと両師匠のやり取りのテンポや間に「芸」を感じたんやなかったか。だいぶ昔のことで記憶が薄れてはいるけれど。
 新しい「必殺」が作られたとしても、ゲスト出演という形でさえもう中村主水は現れんのやなあ。
 謹んで哀悼の意を表します。

 2月21日(日)は「たちよみの会」例会です。ご参加をお待ちしています。

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コメント 2

あずま

藤田まことさん残念ですね。東山主演版が好評だったのでまた2009年もやるのかなと期待していたのですが(事実、松竹撮影所近くの商店街ではポスターがありました)、こういうこと(食道がん)だったのですね。謹んで哀悼申し上げます。合掌。
by あずま (2010-02-19 10:59) 

t-kita

ご本人も新作の出演に意欲的やったと新聞に書いてありましたね。それだけに残念です。
by t-kita (2010-02-20 00:00) 

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