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白光 [読書全般]

 今日は午前中はテレビを見たあと、読みかけの文庫を読了。昼食後、出かける。
 私の高校1年の時の担任で、教育実習の時もホームルームの担当で指導していただいた恩師の墓参。その時のクラスメイトが10人ほど集まり、知恩院にあるお墓へ。その後、祇園のアイリッシュバーでビールを飲みながら歓談。もう数十年ぶりにあうというような顔もあり、それぞれが年相応に老けこみながらも近況報告をしたりして、非常に楽しいひとときを過ごす。次にこの同じメンバーで集まれるかどうかはわからない。なにしろ米国在住の人もいれば愛知在住の人もいる。40数年もたてば、そうなるのです。
 夜の飲み会には欠席して阪急の特急で帰阪。帰宅後、昼間に録画しておいたタイガースの試合を見る。2試合連続完封負け。オープン戦でついた負け癖がそのまま続いているのか。
 夕食後、読みかけの文庫を読んだりする。
 朝井まかて「白光」(文春文庫)読了。明治の初めに画家を夢見てロシア正教会に入信し、ロシアに渡ってイコンを描く修行と、エルミタージュ美術館で西洋画の模写を続け、帰国後も日本人唯一のイコン画家として描き続けた女性、山下りんを主人公にした力作。自らが求める西洋画の勉強とイコンの模写をさせられる修行との差に苦しんだり、帰国後は日露戦争やロシア革命などのために周囲から敵視されるなど歴史の波に翻弄されながらも、ただひたすら絵筆をとり続け、白内障で筆を置いたのちは軍国主義に流れていく世の中とは縁を切った隠居生活を送る。そこにはただただ「絵を描きたい」という一途な思いがあっただけという、山下りんの人生を貫く太い芯があるのみ。悩みもし、喜びもあり、苦しみも味わいと数奇な人生ではありながら、時代の名に流されることのない信念を持ち続けた女性なのです。作者はこういう歴史の表舞台には登場しないが、自分の思いを貫いた女性をうまく見つけ出し、生き生きとその生涯を再現したものが多く、その人物を選ぶ鑑識眼の確かさには目を見張らせる。さらに、その主人公の視点で書くことにぶれがない。なので、よけいにその主人公の生き方が鮮烈に映る。絵を描くことが信仰につながっていった山下りんの生き方は、特に強烈である。イコンという特殊な絵画を主として描いていたため、彼女の作品といえるものは残っているのかどうかはよくわからないけれど、その存在は本作によって長く残っていくに違いない。

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