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ハイドの中のジキル [SF]

 いろいろあって落ち着かん一日でありました。その理由はまた後日。
 帰宅して、録画しておいた「セーラースターズ」を見てから読書。今日はスティーブンソン「ジキルとハイド」(新潮文庫新訳版)を読了。子どもの頃からの愛読書であります。これも何十年ぶりかの再読。こちらは「フランケンシュタイン」とは違いあかね書房版で何度も何度も読み返していたので、ストーリーなど細部まで記憶していた。
 いま読み返すと、非常にわかりやすい物語やなあと感じた。薬品によって、人間の暗部を前面に押し出した人間に変身し、冷酷無比な人格として暴力をふるうことにカタルシスを覚える。そして元の姿に戻った時、理性を前面に出した人格がその所業を恐れる。そして葛藤する。
 欲をいえば、狂言回したるアタスン弁護士が友人であるジキルの行為をどのように見たかが読みたい。ジキル博士の変身を目の当たりにしたラニアン医師はその行為を拒否するんやけれど、探偵役も兼ねているアタスンは、ジキルの遺書を開き、物語はジキルの告白で終わってしまう。理性でコントロールできないはずの人格であるハイドが、なぜ最後はジキルの理性にしたがうような行動を起こすのか。現代の小説ならアタスンが状況証拠からその謎に踏みこんでいくに違いなかろうに。ハイドの中にジキル残っていて、その人格がそうさせたんやろうか。
 とはいえ、人為的に二重人格をこしらえてしまうという着想の面白さは十分に楽しめる。子どもの頃に夢中になって何度も読み返したのもわかるなあ。

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