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筒井康隆讃 [SF]

 一日雨天。月例の京都の医者行きの日。こういう天気の時には家でだらだらしていたいけれど、そういうわけにもいかん。
 往路の車中で、日下三蔵・編「日本SF傑作選1 筒井康隆」(ハヤカワ文庫JA)をやっとこさ読了。
 初期の筒井さんは、ほとばしる才気に筆力がついていってへんという感じがする。これは、25年ぶりくらいに読みなおして今回初めて感じたこと。若い頃に読んだ時はそういう感じはせなんだんやけれど。歳はとってみるものである。
 それと、筒井さんの初期作品はすべてなにか古臭く感じてしもうた。筒井さんが作中で予測している未来社会はかなりその予測通りになっているんで、古臭いどころかその着眼点の凄さを感じるというのに、それでも何か違和感がある。
 少し読み返し、なんとなくわかってきた。1960年代に予測した21世紀が、現実の21世紀にかなり近いために、現代の感覚で読むと微妙なずれが生じているわけですね。そのずれが、「60年代に書かれた未来図」であるにもかかわらず、それらを「現実の21世紀を描いた小説」のようについつい読んでしまうので、古臭く感じられてしまうのかもしれん。
 したがって、本書も半ばを過ぎて筆力が発想に追いついてくると、その違和感がなくなってくる。いわゆる「実験的作品」は「現実の21世紀」を跳びこしてしもうているんやろう。特に「佇む人」と「パブリング創世記」はやはり傑作。若い頃に読んだ時の衝撃とはまた違う「凄み」を感じさせてくれた。
 思うに、筒井作品は書かれたその旬の時に読むべきものなんやなかろうか。その時の流行語などやテレビ番組のタイトルなどをもじった「くすぐり」を入れているというだけでなく、書かれた時の読者に理解できるように作られているんやと思う。そういう意味では年代を超えて読み継がれる星新一さんとは好対照な作家なんやないかな。
 帰路は梅田に寄り、阪神百貨店の理容室で整髪。東梅田の旭屋書店で新刊文庫などをみてまわったあと、夕刻に帰宅。阪神百貨店のバレンタイン・チョコレートの催し場を通らんとあかんかったので、人波をかき分けるだけでくたくたになった。午睡したら、もう夜。月曜も休みでよかったですよ。

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