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天下一の軽口男 [読書全般]

 今日から入試の採点にかかる。採点、点検を繰り返し、より正確な数字を出していく。ここでええ加減なことをしたら後から全部やりなおさんならんからね。しかし長時間続けているとミスも出やすくなる。適宜休憩をとりながら、効率よくやってかんなんのです。
 今日は面接試験があった関係で昨日に続いて30分前倒しの出勤。早めに帰宅できてもへろへろ。夕食後、この前HDDレコーダのエラーで録りそこねた「どろろ」をネット配信で見る。このシリーズはBDにダビングして保存しようと前の回も置いていたんやけれど、録りそこねたのは悔しいなあ。DVDかBDが発売されたらまた考えよう。
 木下昌輝「天下一の軽口男」(幻冬舎時代小説文庫)読了。上方落語の祖といわれる米沢彦八を主人公に、元禄時代に現れた芸人たちの姿を描く。これまで読んだ「宇喜多の捨て嫁」や「人魚ノ肉」のような猟奇性はなく、それよりもほとんど記録に残ってへん米沢彦八の人物像を掘り下げている。こういう確固とした人物像のない歴史上の人物というのは書くのが難しそうやと思うたね。伝承を生かしつつ、独自の視点でいちから造形していかんなんのやから。難波村の漬物屋の次男坊が好いた女子をなんとか大笑いさせてやろうとするところから始まり、師匠となる江戸落語の祖、鹿野武左衛門との出会い、江戸で他の芸人から嫌がらせを受けた後、大坂にもどり京都落語の祖、露の五郎兵衛との交流など、落語という話芸を作りだしていった者たちが絡み合うて「笑い」を追求していく。ただ、作者の関心は特に「笑い」にはないのか、あくまで新しい話芸を創造していく人間の生き方に焦点をあてているように感じた。もちろんそれはそれでええんやけれど。それでも多くの資料を読みこんで、人物像の定かでない彦八をいきいきと描き出しているのはやはりなかなかの腕前。人を笑わせる芸人の「業」をもっと迫力のある筆致で描き出してほしかったところではあるけれど。

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