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ザリガニの鳴くところ [読書全般]

 今日は成人の日。ハッピーマンデーのため今日になってるけれど、どうせ同じ月曜休みなんやったら本来の小正月である15日を成人の日にしてもええんと違うのんと思うてしまうのは、昭和生まれのおっサンやからかな。だいたい18歳成人になっても市町村主催の「成人式」は「二十歳の集い」などと名前を変えて以前同様20歳になる若者を集めているんやから、もう祝日としての名称も「二十歳の日」にしてしまえよとかどうでもええことを考えてしまう。
 なんか昨日の晩もやたら深夜アニメが多く、午前中はやはりテレビを友とする。昼食後、午睡。
 女優の中村メイ子さんの訃報に接する。享年89。その一生のほとんどを芸能人として生きてきはった生き字引。まだまだお元気な様子やっただけに、残念。「エノケンの孫悟空」などはたぶん見ようと思えば見られると思うので、子役の中村さんが愛らしい演技をしているのを見てもらいたい。声優としても東映動画の初期の長編やテレビアニメ初期のアテレコもしてはる。多芸多才な方やったんやなあ。謹んで哀悼の意を表します。
 ディーリア・オーエンス/友廣純・訳「ザリガニの鳴くところ」(ハヤカワ文庫NV)読了。1960年代後半のアメリカの湿地帯が舞台。父の暴力で家族が次々と逃げ出し、ついには自分一人で生きていくことを余儀なくされ「湿地の少女」と町で呼びならわされた少女カイアが主人公。テイトという少年との交流から読み書きや生物学の知識を得た彼女は、独学で湿地にすむ生き物の生態をまとめあげられるようになる。しかしテイトも大学に進学するため彼女の前から去り、プレイボーイのチェイスと恋に落ちるが、彼は別の女性と結婚してしまう。湿地の生物の生態を描いた図鑑の出版で一人前となったカイアだったが、チェイスが湿地で死体となって発見され、アリバイがあるにもかかわらずカイアは偏見もあって殺人罪で逮捕されてしまい、裁判が始まる……という話。作者はなんと69歳で小説デビュー。もともとは動物学の研究者。それだけに自然描写は非常に生き生きとしている。ただ、カイアの生い立ちを述べた部分もまた非常に細かく描かれているため、そこが濃密過ぎて一気に読むのがちょっと辛かった。それも非常に厳しい生い立ちで、読んでいて苦しくなるのです。裁判のシーンからは描写もそれほど細かくなくなり、一気に読み進めた。証人の証言が陪審員にどう訴えかけてくるのか。陪審員には「湿地の少女」に対する偏見はないのか。そこらあたりの描写も読みごたえがある。自然の中で孤独に生きるというのはどういうことか、社会との接点が限られた貧窮白人の数少ない理解者が黒人の商人であったりと、米国の暗部を突きつけてくるところなど、教養小説であり、社会派小説であり、ミステリの要素も含むという非常に読みごたえのある作品。途中しんどくなってもあきらめず最後の一行まで読むべし。ずんと応えるラストが待ってます。親本発売時には本屋大賞にも選ばれ、本国では映画化もされただけのことはある。いやあ、読み応えがありましたとも。

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人間の証明 [読書全般]

 例年やと元日に録画した「ウィーンフィルのニューイヤーコンサート」を朝から見て、ウィンナワルツで正月気分を味わうんやけれど、昨日の地震報道で放送がぶっ飛んでしまい、再放送枠で見ることになった。そのため、昨年末までのドラマ「ブギウギ」の積み残し分をすべて見てしまう。
 妻の作ってくれた雑煮を食してから、午後は読書。読了後、しばらく午睡。夕刻起きて次の本を読み始めたりする。夕食後、録画しておいたMBS「明石家電視台」を見る。タイガースの選手がずらっと出演し、さんまさんと軽妙なやりとりをする。さすがさんまさん、うまいこと話を引き出すなあ。
 その後はまたしばらくスマホをいじったり本を読んだり。羽田空港で旅客機と海上保安庁の飛行機が接触して海保の乗務員5人が死亡する大事故に。年始から落ち着かん年になった。この1年は自民党の裏金問題とかまだまだもめごとがが多いから、えらい波乱万丈な年になりそう。
 森村誠一「人間の証明」(角川文庫)読了。昨年森村氏が逝去されたのに、代表作を読んでなんだと思い、何冊か購入したものの一つ。発売当時は映画の公開などでベストセラーになってて、逆にそれで読まなんだのですね。
 高層ホテルのエレベーターで刺殺された黒人青年が見つかる。彼の素性もなぜ殺されたかも全く不明。インターポールを通じてニューヨーク市警のシュフタン刑事がスラム街を捜査し、旅費がどうやって作られたかを突き止める。日本では棟居刑事が殺害現場と目される場所に落ちていた麦わら帽子と最上やその詩集を手掛かりに捜査を開始。また、子育ての評論家として売れている八杉恭子とその息子、妻の不倫を追う小山田武夫など、さまざまな人物が登場し、それぞれの物語が綴られ……という話。複数の物語が重層的に進行し、それが最後に一点に収束していく。その巧みさはさすがというほかない。第二次大戦の戦後の混乱、そして、高度経済成長の影など世相を背景にした問題化や時代のひずみが犯罪を生み出していくという社会派ミステリではあるけれど、細かな謎が積み重なり、それが大きな物語に広がっていくところが本書の面白さ。確かにベストセラーになっただけのことはある。もしベストセラーになっていた時に読んだとしても、中学生やった私にはこの面白さはわからなんだやろう。そういう意味では、この年齢になって初めて読んだということにも意味があったかもしれん。まだ2冊ほど訃報に接した時に買うたのがあるんで、そちらもぼちぼちと読んでいきたい。文庫初版時の横溝正史さんによる解説もわかりやすく、おまけに別な掌編もついているお得な一冊でした。

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桜ほうさら [読書全般]

 今日は定休日。午前中はずっとテレビの前にいる。2ヶ月ほどためていた「東京リベンジャーズ」を最終回まで一気に見てしまう。巷間で話題になっていた「しょぼい結末」とはこれやったんか、と確認。ストーリー的にはとっくに破綻していたけれど、ダメ押しみたいにむりやり決着をつけたために主人公のタケミチがここまでさんざん苦労してやり直してきたことの意味までなくなってしもうている。ある意味すごい結末でしたね。
 昼食後、2時間ほど午睡し、買い物に出る。郵便局で年賀はがきを買い、駅前の書店で妻の「月刊フラワーズ」を買い、コンビニに立ち寄ったりしてから帰宅。妻はその間に日帰り帰省。返ってくるまでスマホをいじったり本を読んだりして過ごす。妻が帰宅して夕食を取り、また読書。読了後、次の本を読み始めてたら寝落ち。明日は年賀状のデザインを完成させて新しいプリンタで印刷することにしよう。
 宮部みゆき「桜ほうさら 上・下」(PHP文芸文庫)読了。実は宮部みゆきさんの時代小説を読むのはこれが初めて。上総の国の小藩で父が収賄の疑いをかけられ、身に覚えのない父は切腹し、主人公笙之介の兄によって介錯される。お家取りつぶしにあったため、笙之介は江戸詰家老の好意で江戸深川の長屋で貸本屋の写本をしながら父を陥れた偽文書を書いた偽筆の達人を探し、父の恨みを晴らそうとする。事情があって外に出ない少女、和香との交流、貸本屋の主人や長屋の人たちとの人情あふれる生活に慣れたころ、偽筆の犯人が笙之介の前に現れ、父の切腹の真相が明らかになっていく……という話。情感で敷いた伏線が下巻の最終話で一気に回収されていくところなど、ミステリの名手である作者の面目躍如。親子の絆、兄弟の確執など笙之介の知らぬところで他の人々がすべてわかった上で動き、実は笙之介は問題解決のためのコマの一つにすぎなかったというところなど、読んでいてうならされるところが多く、今後、宮部時代小説にはまりそうな予感がしている。10年ほど前にNHKBSでドラマ化されていたことも知らずに読んだ。そちらも再放送される機会があれば録画して見てみたいものです。笙之介を想う和香の心情が救いになっているところなども後味の悪さを中和させたりしていて、そこらあたりの描写のうまさにも官服した次第。まだまだ読みたい本が増えていくなあ。困ったことです。

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岡田タイガース最強の秘密 [読書全般]

 今日は出勤日。3学期向けの教材作成、学年末の成績を出すためのエクセルの表作成などで1日つぶれる。とにかく時間に余裕のある時に手間のかかることはすませておかんと、いざという時に時間がないとばたばたせんならん。それは避けたいからね。
 定時に退出し、直行で帰宅。しばらく寝床にどぶさり、スマホをいじったり本を読んだり。夕食後も読書など。明日は私の御用納め。鋭気を養っておきたい。
 吉田義男、田淵幸一、江本孟紀、掛布雅之、金村曉、赤星憲広、改発博明「岡田タイガース最強の秘密」(宝島社新書)読了。タイガース日本一便乗本。7人の書き手がそれぞれの視点から見た岡田監督像を語る。掛布さんは優勝時に出版されたものと内容がかぶるから、他の人を選んだほうがよかったんやないか。面白かったのは赤星さんで、彼が現役時代、岡田語の通訳を若手に対してやっていたらしい。なにしろ岡田監督は頭の回転が速いのか言いたいことを整理でけんのか、過程をすっとばして結論しか言わなんだりする。金村さんのコーチ要請を受けなんだ裏話も興味深かった。前回の監督時に1年だけとはいえ岡田監督のもとでプレーしていた金村さんは、その時の記憶から特定の選手ばかり起用して故障した時に、二軍コーチとしてケアするという役割になるやろうと予想していたけれど、ふたを開けたら故障者が出んように選手起用をしていたので要請を受けておいたらよかったと述懐する。吉田さんは1985年優勝時の思い出が中心。江本さんはあまり内部のことに精通してへんので、外から見た印象のみ。田淵さんは星野監督との比較。もとデイリースポーツ社長の改発さんだけはあまり表に出てこないような岡田監督のエピソードを紹介していた。ただ、これもデイリー電子版に不定期連載されていたものとほとんど同じ内容。私は岡田監督誕生の裏でサンスポの「鬼筆」が関わっているとにらんでいるんやけれど、そこらあたりはさすがに改発さんの立場では明確なことは書かれてなんだなあ。
 これは新書で出すんやなくて、昔の「別冊宝島」みたいな感じの冊子にした方がよかったのでは。「最強の秘密」などは書かれてへん。あくまで今季成功したことをそれぞれが別の口で語っているだけに終わっている。便乗本らしい急ごしらえ間の強い一冊でありました。

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福家警部補の考察 [読書全般]

 今日は月例の京都の医者行き。午前中、テレビを友とし、昼前に外出。阪急の快速特急“雅洛”で上洛。年末とあってかなり混んでいた。帰路、母の入っている施設を訪問。おそらく年内最後の面会やろう。しっかりと手を握ったりして10分間の面会を終える。阪急の特急で帰阪。
 帰宅後、車中で読んでいた本を最後まで読んでしまい、少し午睡。夕刻、スマホをいじり社説のダウンロードなどをしてから夕食。食後も寝床で読書。寝落ちはせずにすんだ。
 大倉崇裕「福家警部補の考察」(創元推理文庫)読了。倒叙ミステリシリーズの最新刊の文庫化。短編4本を収録。「是枝哲の敗北」は愛人を殺害した皮膚科医、「上品な魔女」は夫を事故に見せかけて殺害した妻、「安息の場所」は強請屋を殺害したバーテンダー、「東京駅発6時00分のぞみ1号博多行き」は自殺した恋人の復讐をする証券マンが登場。これまでのシリーズ同様、いずれも趣向を凝らしたトリックで楽しめる。特に「上品な魔女」の犯人の人物造型は特筆もの。夫が屋根から落下する音を聞きながらパスタを平然と茹でる姿など背筋が寒くなる。「東京発――」は福家警部補が新幹線のぞみに乗って京都に行く車両の中で、部下の二岡との電話のやりとりとネットで配信されているニュースから犯人を特定するというこれまでにない趣向。作者の技巧が1作ごとに優れたものになっているのがわかる。残念ながら、次巻はまだ単行本にもまとまってへんから、文庫で福家警部補の新しい活躍を楽しめるのはかなり先になりそう。作者にも事情があるんやろうけれど、倒叙ミステリが好きな私としては、がんばってペースをあげて出してもらいたいものです。

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幸せな虎、そらそうよ [読書全般]

 愛すれどTigers「2023年を振り返って~38年ぶりの日本一を生んだもの」を更新しました。

 今日は定休日。午前中は例によって例のごとくテレビを友とし、午後からは午睡。夕刻社説のダウンロードなどをしてから読書。夕食はなべもの。食後も読書の続きと、寒い一日をひたすら自宅で過ごす。
 岡田彰布「幸せな虎、そらそうよ」(ベースボールマガジン社)読了。今季のタイガースの戦いについて、監督という立場からまとめたもの。構成はもと日刊スポーツ記者の内匠宏幸さん。つまり、岡田監督からの聞き書きということになる。実際、週刊ベースボールでの連載で既に語っていることや、優勝記念ムックなどでのインタビューで語っていること以上の話はない。まあ、ファンから監督へのご祝儀に買うたというような感じですかな。最も雑誌やムックの類は一定の期間が来たら書店から消えるけれども、こういう単行本は来シーズンになっても大型書店などではまだ棚に残っているやろうから、そういう意味では無価値とはいえない。私としては、どこを切ってもどこかで読んだり聞いたりした内容ばかりだったので食い足りなかった。優勝記念ムックの類を一切買わなんだ方にとっては新鮮な視点で読めるのかもしれないが。できれば単行本でしか読めない監督招聘までの裏話など、もう少し赤裸々な証言が欲しかった。そこらあたりは構成の内匠さんの配慮などもあったのかもしれないね。

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魔女の冬 [読書全般]

 本日は出勤日。短縮授業のため、私の持ち授業はなかったけど、朝の登校指導や、掃除当番の監督などはあるし、成績提出のためにあとにのばしていた雑事がいくつかあり、休んではいられず。午後、教材作成が終わったところで一通り予定していた仕事ができたので、1時間休を取り、早退。
 帰宅後、妻は日帰り帰省で不在やったんで、帰るまで読書。妻の帰宅後夕食を取り、本を読んでしまう。その後久々に寝落ち。明日から休みなんでほっとしたのかな。
 キャサリン・アーデン/金原瑞人、野沢佳織・訳「魔女の冬 冬の王3」(創元推理文庫)読了。3部作の完結編。前巻で魔術師を倒しながらもコンスタンチン司祭の扇動で魔女として火あぶりにされかけたワーシャは、精霊の助けでなんとか逃げ出し、「真夜中の国」に迷い込む。彼女はそこで自分の先祖からつながる不思議な力の由来を知り、土着信仰と教会の併存や、人間と政令の橋渡しをしたいという気持ちを確かなものにする。しかし最大の味方である冬の王は、季節が夏であったため力を発揮できず、第1巻では敵として立ちふさがりなんとか縛り付けていた熊の精霊を解放して味方につけ、モスクワ大公とハン国の決戦で兄サーシャとルーシ(ロシア)の民のために全力で戦う……という話。
 全3作を通じ、常に孤独な戦いを強いられてきたワーシャは最後まで本当の理解者を得られることがない。それでも自分のすべきことは何かを模索し続けながら、自分に流れる精霊と交流する力を信じてひたすらけなげに突っ走る。ただ、それがどこまで読み手と共感できるかというと、いささか微妙なところではある。身勝手といえば身勝手やし、自分よりも兄や姉、姪たちのことを最優先する滅私ぶりと、ルーシという自分のよって立つ土地すべてのために突っ走る正義とがなんかかみ合わんままラストまでいってしまうという感じなんですね。とはいえその軸のぶれはまだ大人になり切っていない少女らしい部分でもある。そういう意味で作者は現代の若者の気質に通じるメンタリティをワーシャに与えたのかなという気もする。その等身大のリアルさが本書の魅力になっているんやろう。もっとも、そこに共感できないおっサンである私にはぐいぐいと引きこまれるほどの魅力がなく、読み進めていくのに少しばかり苦労した面もあった。それでもなんとか読み切れたのは、作者のストーリーテリングの巧みさがあってこそ。人間の信仰心とは何か、生と死を左右できる力を持つことの不幸、明らかに人間には理解でけん精霊たちの行動原理との衝突などがしっかりと描きこまれていたからこそ、本書を最後まで飽きることなく読み進められたんやないかと思う。予定調和的なファンタジーが多い中、ここまで読み手を翻弄する作品は異色。そういう意味でもラノベのファンタジーあたりとは一線を画する秀作といえるやろうね。

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塔の少女 [読書全般]

 今日も定休日。午前中は例によってHDDレコーダの奴隷となりを友とし、昼食後は読書。読了後、午睡。夕食時にはサンテレビ「熱血! タイガース党」を見る。サンテレビがんばってるね。低予算(たぶん)のローカル番組やけれど、ハワイまでスタッフが行ってタイガースの優勝記念旅行を取材。村上アナウンサーが現地からレポートしたりしている。スタジオゲストはなかったけれど(旅行を辞退した石井投手や加治屋投手を呼ぶかと思うたけれど、それはなし)、ビデオで伊藤将投手と岩貞投手が対談。会話のなんともいえん間がよろしいな。
 夕食後はしばらく読書。寝落ちはせんですんだ。
 キャサリン・アーデン「塔の少女 冬の王2」(創元推理文庫)読了。3部作の第2部。故郷を追われるようにあとにしたワーシャは少年の姿で愛馬ソロヴェイとともに深い森を進み、ハン国の盗賊からさらわれた少女たちを助け出す。モスクワ大公に遭遇したワーシャは兄のサーシャと再会。「勇者ワシーリー」と呼ばれてモスクワに入り、姉のオーリャとも再会する。しかし、モスクワには大公の座を狙う謎の領主カシヤンとハン国の特使と称する盗賊頭が入りこみ、ワーシャを罠にかけようとしていた。ワーシャの正体を知るらしいカシアンの真の姿は……という話。ワーシャの向う見ずな行動から次々と運命の輪が動き出し、ワーシャ同様に土着の妖精を見ることのできる姪のマーリャの誘拐や、前巻から再登場した惑えるコンスタンチン司教の策謀、そしてカシヤンたちによる暴動など、モスクワを火の海にするクライマックスになだれこんでいく。作者は米国人ながらまるでロシア人が書いたかのようにこのファンタジー世界を描き出していく。私はロシア文学には疎いんでこれがどれだけ中世ロシアの雰囲気を描き出しているのかはよくわからんのやけれど、ハン国に対する対抗たちの態度など、「タタールのくびき」時代のモスクワ大公国の状況などはさもありなんという感じがあり、それがまた空想世界の妖精たちのありようなどをリアリティたっぷりに紡ぎ出している。必死になってモスクワを救ったワーシャの今後がどうなるのか、完結編が楽しみであります。

 12月17日は「たちよみの会」例会の予定です。今月も13:00~15:00の短縮バージョンで行います。ご参加お待ちしています。

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熊と小夜鳴鳥 [読書全般]

 今日は定休日。昨日までよくがんばったので、安心して休める。
 午前中は今週ためていた録画番組をまとめて見る。かなりたまっているので、全て、とはいかず。ずっと見続けていると頭が疲れる。
 昼食後、少し読書をしてから午睡。夕刻、社説のダウンロードなどをしてから夕食。食後はまた寝床で読書など。昨日まで根を詰めて仕事をしていたんで、かなり疲れていたということがわかるなあ。
 キャサリン・アーデン/金原瑞人、野沢佳織・訳「熊と小夜鳴鳥 冬の王1」(創元推理文庫)読了。久しぶりに本格ファンタジーが読みたくなり、三部作完結を機に一気に読んでしまうことにした。舞台は14世紀半ばのロシア。まだ「タタールのくびき」から脱していない時代。それでもモスクワ公国が勢力をのばし、ロシア各地にキリスト教が広がっている。主人公は地方領主の末娘、ワーシャ。彼女は土着の精霊たちを見ることができ、話しかけたりもできる。亡くなった母の年の離れた妹アンナが後妻として父に嫁いでくるが、彼女も精霊を見る能力を持っていた。しかしアンナはモスクワで育ち敬虔なキリスト教信者やったから、精霊たちを悪魔と恐れ、ワーシャともことごとく対立する。モスクワから送られてきた司教コンスタンチンは、ワーシャを恐れながらもいつしか魅かれていく。精霊たちはコンスタンチンが領民たちに徹底的に土着の精霊信仰を捨てさせたため弱体化し、そこにつけこんだ「熊」と呼ばれる精霊が村を滅ぼそうと現れる。ワーシャは「熊」の兄である「冬の王」の力を得て、この危機を乗り切ろうとするが、アンナやコンスタンチンの妨害もあり、孤独な戦いを強いられることになる。
 米国生まれの作者がロシアのおとぎ話などを土台に、勇敢な少女の孤独な戦いを描き出す。これはただの寓話ではなく、宗教戦争の側面も持つように感じられた。土着の信仰を駆逐していくキリスト教は、主人公から見た宗教的侵略者であり、彼女は自分に見えるものをただ信じて戦うしかない。コンスタンチンが聞いた「神の声」は何か、が本書のキモ。信仰というものが自己顕示欲とつながるとどうなるのかなど、現代の作家らしいアプローチを取る。物語には区切りがついているけれど、村から追い出されるように旅に出るワーシャ、そして「冬の王」の真意がどこにあるのか、続きが気になる。ワーシャの勇気は読み手に希望をくれる。一見孤独であるように見えながらも、彼女が信じ続けてきたものがその味方をしてくれる。そのあたりの描写も非常に丁寧に描かれている。ハイ・ファンタジーではなく、現実の歴史と絡み合うようにして展開する物語というのも興味深い。続巻では旅に出るワーシャの姿が描かれる。どのような旅になるのか楽しみになる幕開けやね。

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眩(くらら) [読書全般]

 大相撲小言場所「九州場所を振り返って~霧島が大関の格を示す優勝~」 を更新しました。

 今日も冬らしい気候。暖房を入れないと特に朝は寒い。午前中はひたすら録画した番組を見る。HDDレコーダの残容量確保のため、少しばかりたまってきている「題名のない音楽会」を見ては削除。昼食後、テレビ疲れで午睡。夕刻目覚めて社説のダウンロードなどをしたあと、大相撲九州場所千秋楽を見る。詳細はここ に書いた通り。条件付きの三賞なんてやめてしまえ、という思いを一層強くした場所。オールドファンの繰り言かもしれんけれど、昔は「条件付き」などなかったし、三賞には各賞に一人ずつという原則に沿った選考がなされてきた。一度三賞制定の原点に返っていただきたいと願うのみ。
 相撲を見たあと、夕食。食後は読書。あすから仕事が忙しくなるので、残業は当然という感じになりそう。寒いのは嫌やなあ。
 朝井まかて「眩(くらら)」(新潮文庫)読了。主人公は葛飾北斎の娘、栄。幼少時から筆を持ち、家事よりも画業が優先するようになり、ついには葛飾応為の号で肉筆浮世絵の傑作をものするようになった。文庫カバーには代表作の「吉原格子先之図」が使用されているが、本文の各章題にも北斎や応為の作品名を配している。創作者としての女性の生き方は作者と重なるところがあるのかもしれない。父の門下だった男との情愛や、うまくいかなかった結婚、「普通の女性」になってほしがる母との確執、親を失った甥との葛藤など、主人公の一生が勢いのある、しかし精緻な文章で綴られていく。特に創作者としての苦悩などは読み手にその苦しさと喜びが強く伝わってきて、それだけでも読む価値がある。傑作です。

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