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クラウディア・アバドの死 [追悼]

 クラシックの指揮者クラウディア・アバドさんの訃報に接する。享年80。胃癌で療養中やったという。
 イタリアの指揮者とはいえ、抜けるような青空というより、薄雲を掃いたようなさわやかな秋の空、というような感じの演奏をする指揮者という印象がある。特に若き日に録音されたメンデルスゾーンの交響曲集は、聴いてて心浮き立つような名盤で、私は数ある録音の中でも好きな演奏やなあ。
 カラヤンの後任としてベルリンフィルを率いることになったけれど、カリスマ性のある指揮者やなかったので、ベルリンフィルを自分色に染め上げるなんてことはせなんだ。濃いクラシックファンには物足りなんだかもしれんけれど、果たしてアバドとベルリンフィルはベストの組み合わせやったやろうか。オケの自発性に任せたという意味ではウィーンフィルと録音したベートーヴェンの録音は感動するようなものやなかったとはいえ、楽しく聴ける録音やったと思う。何度か振ったニューイヤーコンサートでもウィーンフィルとの相性の良さを聴かせてくれた。
 あくのなさは、協奏曲の伴奏にはぴったりで、アルゲリッチの伴奏を何曲か録音しているけれど、強烈なピアノ独奏をみごとに支える伴奏で、チャイコフスキーのピアノ協奏曲など、何度も繰り返して聴いたものです。
 少し上の世代のカラヤン、バーンスタイン、ショルティなどの巨匠たちとは違い、強烈に個性を主張しないところが持ち味やったと思う。でも、決して凡庸な指揮者やなかった。それは、ムソルグスキーの作品集のCDを聴けばわかる。あれはそれまで私が抱いていた印象を覆す強烈な一枚やった。アバド式の録音で一枚選べと言われたら、私はこれを選びたい。初稿に基づいた「禿山の一夜」を初めて聴いた時のインパクトというたら!
 謹んで哀悼の意を表します。

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