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星の王子さま(管啓次郎・訳) [読書全般]

 妖精さんは新たには現れず、みんな隠棲していたので、明日から休校期間が終わり通常授業に戻る。とはいえ学校閉鎖明けなので、まずは健康観察と新型コロナウィルス感染症拡大防止の心得を各教室で行うてもらう。昨日私が作った文書を養護教諭が大幅に改定したものを印刷。午後からの職員会議で配布した。これで収まったらええんやけれど、これで治まったらええんやけれど、妖精さんはおとなしくしてくれへんやろうからな。この冬はこんなんの繰り返しになるかもしれん。生徒のみなさん、マスクはしてよね。
 定時に退散し、帰宅後読書。今週はあと2日。なんとか乗り切ってもらいたいものです。
 サン=テグジュペリ/管啓次郎・訳「星の王子さま」(角川文庫)読了。これはまた個性的な翻訳であります。「王子さま」とか「坊や」なんて言葉は一切出てこない。砂漠に忽然と現れた少年は一貫して「ちび王子」と呼ばれる。「ちいさな王子」ではなく「ちび王子」。そしてこの王子は自分のことを「おれ」と言い、ぞんざいな口のききようをする。フランス語の原文ではどういう雰囲気の言葉づかいをしているのかわからんけれど、この訳者は「王子さま」を好奇心いっぱいのやんちゃな少年としてとらえ、それを示すために「ちび王子」としたんやろう。そうすると、他の登場人物の位置づけも自然と変わってくる。パイロットは「ちび王子」の保護者のような立ち位置になり、キツネは「ちび王子」を教え導く哲学者という感じになっている。内藤訳とは対角線上に位置する異色の「星の王子さま」で、もしかしたら訳者は題名も「ちび王子」にしたかったかもしれんね。でもそれではさすがにセールス上問題があるので、定番である「星の王子さま」で出さざるを得なかったんやろうな。本書は原著通り作者の挿絵を使用しているけれど、子ども向けの「角川つばさ文庫」ではなんと西原恵理子さんを挿絵に起用していて、実は私はそちらも持っていたりする。そやからこの訳で読むのは2度目なんやけれど、内藤訳、池澤訳、倉橋訳と毎日それぞれ独自の視点に立った訳文で読んだあとで読むと、その異色ぶりが際立ってくる。この訳も悪くはないし面白いことこの上ないけれど、たぶん他の方の訳文に親しんだあとで、2冊目か3冊目に読む方がより楽しめるんやないか。まだ「星の王子さま」を読んだことがない方には最初の一冊としてはおまりお薦めしないな、私は。

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