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星の王子さま(倉橋由美子・訳) [読書全般]

 今日も妖精さんのおかげで休校。それでも私は保健室でお仕事。新たな妖精さんは現れず。どなたも隠棲している。残る妖精候補が数名。明日にも判明の予定やけれど、隠棲したままでいてほしいね。そしたら明後日には授業再開。もっとも試験前なんで試験勉強をしましょう、という予定なんですけれどね。ひたすらパソコンの前に座り、授業再開日の朝、全校生徒向けの健康観察のポイントを示した文書を作る。ど素人の付け焼き刃なんやけれど、それなりに得た情報をもとに作成。ところが、養護教諭は「これは違うのでは」と疑義が出た。というのも、私は必要事項を文章で示したんやけれど、これでは担任の先生が消化し切れへんし、生徒にも示しにくいと。ポイントを絞って箇条書きにしてはと提案され、それももっともと納得して、箇条書きに書き換える。これが難物で、私はやはり「文章の人」なんやなあと実感した次第。先に提示したものはけっこうすらすらと書けたんやけれど、書き直しの分はかなり苦しんだ。あとは養護教諭が手直しをしてくれるので、任せて定時に退散。
 帰宅してから今日もすぐに読書。夕食後も読み続けていたので、録画した番組は見られず。いや、テレビばかり見てたらアホになるぞ。もとからアホか。
 サン=テグジュペリ/倉橋由美子・訳「星の王子さま」(文春文庫)読了。なんでも倉橋さん最後の訳業で、出版前に亡くならはったという。あとがきで御自身が「あくまでも大人が読む小説」として翻訳したと書いてはる。切れのいい文体で、確かに子ども向けやない。王子さまの言いまわしもかなり大人びた感じなのですね。「成長して大人になることを拒否した子ども」という位置づけなんやそうで、確かに内藤訳の「無垢なあどけない少年」という趣とは正反対の、「大人って変だ」「大人って、まったくもって変わっている」と否定する。同じ場面でも内藤訳やと大人のことが理解できずに疑問に思うという感じになるんやけれど。さらにあとがきではパイロットが作りだした幻影、砂漠で孤独に陥ったパイロットの分身というような解釈まで示している。本書で印象的なのは、最後に王子さまがパイロットと別れる場面。幻のように消えていくような印象ではなく、自ら求めて命を断つような印象が残る。パイロットが現実世界に戻るためには王子さまは死ななければならないという解釈が、訳文の中でも示されている。
 本書は読み手によって読み方がいろいろと変わる寓話ではあるんやけれど、同じ原文が日本語に移しかえられる際に、訳者によってここまで違う印象が残るというのは驚き。かつては内藤訳だけやったから、誰もが内藤濯の解釈に基づいて読んでいたけれど、現在は様々な人の訳で出ているから、未読の人が最初にどれを選ぶかも大切になってくるんやろうなあと感じた次第。これまでの王子さま像を覆すような、幻想文学の作家ならではという訳業でございました。

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