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旅に出る時ほほえみを [SF]

 1週間ぶりにお山の学校に出勤。昨日あった職員会議の資料に目を通したり、来年度の新しいポジションに向けて確認せんならん事項があったり、忌引き休業の届け出をしたりと、ぼつぼつと日常生活のリズムを取り戻すことに腐心する。幸い、コロナウィルス禍で休校していることもありそれほど喫緊の仕事がたまっていたわけやないので、少しずつマイペースで仕事ができた。定時に退出。
 帰宅後は録画した相撲中継を見たりして過ごす。白鵬、朝乃山、御嶽海、隆の勝らが4連勝。白鵬という力士は、こういう協会全体がピンチという場面になると強い。横綱の責任感というものを感じさせる。たいしたものです。このまま白鵬、朝乃山、御嶽海の3者が優勝争いの中心になって終盤まで取り続けてくれるときっと面白かろう。
 ナターリヤ・ソコローワ/草鹿外吉・訳「旅に出る時ほほえみを」(白水Uブックス)読了。かつてサンリオSF文庫で出ていたものの復刊。作者はソビエト連邦時代のロシアの作家。原著は1965年に刊行されている。話の最初から「おとぎ話」であるとことわっているように、SFというよりは寓話です。《人間》と文中で呼ばれる科学者が主人公。彼は人工の怪獣を創り出す。当初は民主的な政治をしていた首相が総統に着任し、独裁政治を始める。怪獣を量産し、武器として使用させる総統に対し、《人間》ははっきりと反抗して……という物語。固有名詞はほとんど出てこず(ルサールカという女性だけ)、登場人物はみなその肩書で示される。そこが寓話たるゆえんなんやろう。国家総統は自分に反対するインテリだけやなく、共産党員や労働者も弾圧する。ソ連で書かれたものやから、わざとそういう設定にしたのか。それでも本書はどのような国家であってもあてはまるように描かれている。権力者が命令しなくても忖度した行動をとったりしている様子は、現在の日本に照らし合わせることもできそうやね。どちらかというと素朴で単純化された物語。本書が普遍性を持つのはそういうあたりなんやろう。ただ、寓話としての出来はジョージ・オーウェル「動物農場」には及ばん。毒っ気がないのですね。もしかしたらソ連ではそんな毒っ気たっぷりの物語は書かれなんだのかもしれん。作者の精一杯の抵抗と見るか、あるいは社会主義国家から見た自由主義国家の弱点を描こうとしたと見るかは読者にまかされているんやろうね。こういう作品をすくい上げていたサンリオSF文庫はやはり独自の存在やったんやなあ。

 3月15日(日)は、「たちよみの会」例会です。多数のご参加をお待ちしています。

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