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騙し絵の檻 [読書全般]

 愛すれどTigers「佐藤輝、2試合連発で今季初の連勝」を更新しました。

 今日は始業式と入学式。始業式前には在校生の自転車登校の指導当番で交差点に立ち、入学式では保護者受付で体育館の入り口に立つ。立ち仕事ばっかり。確か去年も保護者受付やったから、この調子やときっと坂道の学校では毎年受け付け係に固定されるんやろうなあ。まあ、それはそれでやりやすくてええんやけれどね。
 生徒たちが帰った後は授業開始に向けて、成績計算のエクセルに新しい名簿の打ちこみをしたりする。昨年度は後手後手にまわることが多かったから、とにかく先手必勝でいかねば。
 定時に退出。外は雨。ああしんど。帰宅後は寝床で読書など。明日も授業準備が中心になりそう。
 ジル・マゴーン/中村有希・訳「騙し絵の檻」(創元推理文庫)読了。2000年代の海外ミステリで高い評価を受けたものの品切れになっていたのが新装版で再発。幼馴染の女性と不倫をした上に殺し、それを調べていた私立探偵も殺したという罪で終身刑になっていたホルト。16年たって仮釈放を認められた彼は、自分に無実の罪を着せた真犯人を突き止めるべく孤独な調査を始める。フリーの新聞記者の女性、ウェントワースの協力でいろいろな証言を集めるが、なかなか真相にたどり着けない。容疑者は自分が所属していた会社の役員たち。もと妻や親友などをも疑わざるを得ないホルトの神経は次第に追い詰められ……という話。16年の囚人生活ですっかりねじ曲がってしもうた主人公の心理や、誰の証言が本当で誰の証言が嘘なのかわからない状況下での推理など、相当集中して読まんと真相にたどり着けん。すべての伏線を回収し、見事に真相にたどり着くラストなど、いやさすがに初版時に評判になっただけのことはある。主人公の荒み方がたまらん。復讐の鬼、というだけでなく、人間不信に凝り固まり、協力者のウェントワースまで信じられなくなったりする心理描写も読みどころのひとつ。収監されるまではまともな人格やったやろうにと思うと、ちょっときついものがある。ただ、ウェントワース記者の献身的な協力の理由がいくぶん弱いように思う。主人公への同情が愛情に変わったのか。それはなんでなのか。そこまで書きこまれていたらなあ、とは贅沢な悩みか。警察にも頼れない孤独な探偵役の悲壮な推理という、その点もまたよし。本格ミステリのお好きな方はぜひご一読を。

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ヤフーレ [日常生活]

 今日は一日暖かく、体がだるい。土曜深夜に録画したアニメはどれも面白そう。今のところ、曜日によってかなり差がある感じ。まだすべて出そろうてへんので、新番組で面白いものにあたるかもしれんけれど。阿部智里原作の「烏は主を選ばない」はNHKが再々番宣をしていて楽しみにしていたけれど、期待を裏切らないできの良さ。あー、また原作を読みたくなってきた。いかんなあ。
 午後は午睡。驚くほど爆睡。目覚めたらもう薄暗くなっていた。妻も体のだるさを訴えていた。気温の変化と気圧の変化で自律神経なるものがへろへろになっているんやないか。
 夜は、デーゲームを録画で見る。今日の中継はNHK。試合終了まで必ず放送してくれるから、安心して午睡できたのかもしれん。試合はスワローズのヤフーレという、妻曰くショッピングモールみたいな名前の新外国人投手を打ちあぐねてタイガースが敗れた。「なんかありそうでしょ、『ヤフーレ塚口』なんて感じのショッピングモールが」とは妻の弁。確かにありそう。どこ出身の人かと選手名鑑で調べたら、ベネズエラやそうです。ドミニカ出身の人はもろスペイン語という感じの人が多いんやけれど、パナマとかベネズエラあたりやとちょっと違う感じですね。ブレーブスにいたマルカーノ(ベネズエラ)とか、ホークスにいたズレータやタイガースに入ったゲラとか(両名ともパナマ)。マルティネスとかロドリゲスとかはたいていドミニカ出身。歴代外国人選手の名鑑を見たら、以前はデービスやジョーンズなどが多かったけれど、最近はマルティネスがかなり増えたと思う。
 なんでドミニカとベネズエラやパナマではこうも違うのか、地理か歴史の先生にまた聞いておこう、と思うけれど、職場ではころっとそのことを忘れているんですよねえ。

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毎日鳥谷解説 [テレビ全般]

 今日も完全休養日。昨夜録画した深夜アニメやまたたまってきた「題名のない音楽会」などの録画を見たりしてから、少し読書。
 昼食後は例によって午睡。少しばかり早く目覚めたので、テレビ放送が始まるまでのデーゲーム中継をDAZNの配信で見てから、テレビの追っかけ再生に切り替え。今日の中継はカンテレ。解説は鳥谷さん。なんか局を選ばず鳥谷さんが毎日解説しているな。鳥谷さんや能見さん、掛布さんなどはテレビ局と専属の解説契約をしてへんので、使いでがあるんやろう。もっとも、そのせいでどの局の中継かがわかりにくくなっている。ダブル解説の場合、組み合わせでまだわかるんやけれど。NHKはたいてい専属解説者を起用するんで、藤川球児さんとかもとスワローズの宮本さんとかの解説でわかる。MBSやと亀山さん、ABCやと関本さん、桧山さん、下柳さん、カンテレやと田尾さん、ytvやと川藤さんや赤星さん、サンテレビやと福本さん、中田さん、広澤さんの声がしたら、ああ、今日はMBSか、てな感じでわかるんやけれど。テレビ大阪なんか江夏さんが解説しなくなってからは鳥谷さんや能見さんばかり起用するのでややこしい。まあ、サンテレビはアナウンサーの声だけでどこの局かわかるけれどね。
 カンテレは放送開始は試合開始から35分もたってからやったけれど、サブチャンネルを駆使して試合終了まで放送してくれた。ありがたいことです。もっとも、アナウンサーが4時ごろ「間もなく放送を終了します。続きはBSフジで」なんて言うた時にはちょっとどきりとしたけれど、どうやら全国放送やったらしく、フジテレビ系の局で見ている人たちへの告知。テロップでは「関西地方はこのまま中継を続けます」とテロップが出たんで、一安心。新聞のテレビ欄には「最大延長はS2で18時まで」とあったのに、一瞬だまされたかと思うた。
 試合はサトテルが今日もホームランを放ち、ゲラと岩崎で逃げ切り。いやあ、ゲラの加入は大きいなあ。ジャイアンツに拾われたK・ケラーやと不安になったからね。
 試合終了後は寝床でスマホをいじったり読書をしたりして過ごす。夕食後も読書の続き。デーゲームを早めに見たおかげでゆっくり本が読めた。明日の中継は延長はないのかな。朝刊でちゃんと確かめんと。

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大日本帝国の銀河3 [SF]

 今日も定休日。午前中は録画した番組を見たあと、パソコンに向かい少しばかり作業。昼食後、午睡してから夕刻に目覚めたあとは読書。
 夜はサンテレビで今季初めてのナイター中継。神宮球場に濱中、鳥谷両氏の解説で今季はスタート。試合は延長戦。最後まで放送してくれるサンテレビの中継でよかった! サトテルのホームランで決着。明日はデーゲーム。
 試合終了後、少し調べもの。サンテレビではタイガースが勝つと六甲颪を流すんやけれど、その音源は誰かテロップが出ない。声を聞けば、ミスタートラこと唐渡吉則さんやと思うんやけれど。サンテレビさん、せめて音源のテロップくらい表示してよ。
 林譲治「大日本帝国の銀河3」(ハヤカワ文庫JA)読了。シリーズも佳境に入り、オリオン集団の本拠地が南太平洋にあることを突き止め艦隊が出動するが、彼我の差を見せつけられるだけに終わり、オリオン太郎の要求通り、日本に大使館を置くことになっるが、その大使館とは……という話。本シリーズのテーマである異文化理解の困難さは、地球外から来訪したオリオン集団との技術力の差でますます強くなっていく。何より興味深いのは、地球人たちがこれだけ彼我の差を見せつけられながら、なおもナショナリズムを基本に行動しているという描写。舞台が第二次大戦直前ということもあるから、登場人物たちの視野がより狭くなっているという状況をていねいに描いている。ここは長年架空戦記を書き続けてきた林さんならではというところ。むろん、歴史改変という意味では本作が一番スケールが大きいんやないかと思われるんやけれど。さて、今後地球側の各国要人たちがどうオリオン集団と接していくことになるのか。次巻が楽しみであります。

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山本弘の死 [追悼]

 今日は定休日。新年度開始でフル回転した疲れが出て、午前中、録画した番組を見たあと、少しうとうと。昼食後、すぐに午睡。寝ている間に妻が日帰り帰省した時も気づかぬくらい爆睡。夕刻目覚め、タイガースのナイター中継を追っかけ再生で見る。今日も中継はカンテレ。タイガースの投手陣もよく踏ん張ったけれど、打線の差でベイスターズに敗れる。なにしろ宮崎と関根が猛打賞。関根に至っては打率が7割を超えてるんやからなあ。それでも1点差で踏ん張ったんやから投手陣はようがんばったと思うよ。タイガースは木浪があかんな。小幡を先発で使うてみるのも手やないかと思う。中野もしんどいな。糸原を起用してみてもええんやないか。大山も打つ方はどん底。ただ、守備のことを考えると外されん。ノイジーも前川も好調なんで、ノイジーを一塁で使えんものかな。アクセルが3人並ぶベイスターズと、ブレーキが要所要所にいてるタイガース。その差が出た。
 スマホで社説のダウンロードをしていたら、SF作家山本弘さんの訃報に接する。享年68。死因は誤嚥性肺炎。
 個人的な接点はほとんどなかった(学生時代に「星群祭」合宿の麻雀部屋で卓を一度囲んだことがあったか)けれど、若い頃から作家として活躍したはったし、特に「と学会」の本に掲載されていた文章は軽妙かつ真摯で、何度も繰り返して読み楽しませてもろうたものです。「MM9」はドラマ化され、まだ「カーネーション」でブレイクする前の尾野真千子さんや「おんな城主直虎」でブレイクする前の高橋一生さんが出演していたのを見ていた。原作を読もうと文庫化されたのを買うたのに積ん読にしてしもうてるなあ。そう、なぜか山本さんの本、私は積ん読が多いんです。代表作などもちゃんと買うているのに。読んだら面白いのはわかっているのにねえ。
 というわけで、私にとっては「トンデモ本を楽しく紹介し、きっちりと批判する方」というイメージの方が強かったりするのでした。
 とはいえ、若い頃、少しばかりご自身との接触もあり、年齢もそう離れてへん方がなくなるのはやはりつらい。そろそろ積ん読の中から掘り出してちゃんと読んでみんとあかんな。
 謹んで哀悼の意を表します。

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吹き降りの中で [日常生活]

 今日も出勤日。朝から雨。午前中は新入生の自転車通学希望者へのガイダンス。私は自転車置き場で生徒の誘導……のはずが雨天、しかも風が強いというわけでほとんどの生徒が電車やバス、徒歩で登校。自転車に乗ってきた生徒はわずか数名。吹きさらしの自転車置き場で震えながら立っているのは辛かった。
 午後からは授業準備の他は今年度の担当となっている講演に関してあちこちに連絡したりして、こちらもけっこう疲れた。
 というわけで、定時に退出。明日からしばらく休みと思うと、よけいに疲れがどっと出る。
 帰宅後はナイター中継を追っかけ再生で見る。森下の逆転ホームランなどで今季のホームゲーム初勝利。気分良く寝床でスマホをいじくったりしていたらまた少し寝てしまう。まあ、新年度のスタートということでやることが多く、心休まることがなかったからね。

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甲子園球場100年史 [読書全般]

 今日も出勤日。午前中は副担任に入っている学年で書類の仕分け作業。午後は分掌の会議。その後は今年度の授業準備を引き続き行い、定時に退出。しかし目の前でバスが行ってしまい、その分帰宅がどんどんずれて遅れてしもうた。通勤経路が遠いとこうなるのです。帰宅後、すぐにタイガースの試合を追っかけ再生で見る。京セラドームでホームゲーム開幕。しかし村上がまさかの大量失点で、最後は2点差まで追い上げるも力尽きて連勝は成らず。昨オフから岡田監督を名将のなんのと持ち上げるからこんなことになる。長年タイガースファンをしていると、嫌な予感だけは当たるんやから困ったもんです。
 テレビ中継はカンテレで延長なし。放送終了後はDAZNの配信で最後まで見届ける。
 それから寝床でスマホをいじっていたら少しうとうと。さすがに疲れてきたな。
 工藤隆一「甲子園球場100年史」(KAWADE夢新書)読了。竣工から100年目を迎えた甲子園球場の歴史をコンパクトにまとめたもの。著者はもと日刊スポーツの記者。電鉄の歴史や野球人気の変遷などをきっちりと踏まえたうえで、甲子園がいかにして「聖地」となっていったかを活写している。これまでも同じような本は何冊か読んだけれど、直近の10年のことなども書かれている上に、これまであまり触れられていなかった阪神園芸の仕事もちゃんと書きこんである。ただ、グランド整備の神様とうたわれた藤本治一郎さんについて触れられてなかったのはちょっと残念。阪神園芸の神整備にもルーツはあるのだ。とはいえ、竣工100年を機にこうやって若い人にもよくわかる球場史が出されたのは喜ばしいこと。こうなったらベースボールマガジン社あたりが豊富な図版を用いたムックを出してほしい。まあどこかがきっと企画していると思うので、期待しよう。

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2年目の余裕 [日常生活]

 愛すれどTigers「森下の一発で今季初勝利」を更新しました。

 いよいよ新年度開始。新任の先生が着任したり、管理職が新しくなったりと、気分一新。なにより坂道の学校2年目で、精神的な余裕ができたことが大きい。
 午前中は顔合わせの会議がいくつか。午後からは昨年度同様、新入生の心電図とX線検診。こちらも昨年度は前任校とやり方が違うて戸惑うていたけれど、今年度は全体を見渡す気持ちの余裕ができた。
 なによりいっしょに仕事をする人たちとある程度気心が知れているというのが大きいな。
 というわけで、今年度の授業準備などをしたりしてから定時に退出。さすがに2週間ぶりくらいにフル稼働したら疲れました。
 帰宅後、寝床でスマホをいじったり本を読んだりして過ごす。明日からも授業準備。昨年度は手探りやったけれど、今年度はこちらもある程度見通しが立つ。ただ、定休日が木曜と金曜ということになったので、昨年度同様ちょっと余裕のないスケジュールになりそうです。やれやれ。
 まあぼちぼちと行きましょう、というのが新年度初日の抱負であります。

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ディープフェイク [読書全般]

 朝から録画した番組を見るが、先週最終回を迎えたものもあり、深夜アニメは少なめ。それでもドラマ「ブギウギ」を見たりするので午前中は例によってテレビに貼りつき。昼食後、一度パソコンを立ち上げたものの気温が急にあがったりしたせいか体がだるく眠くなり、すぐに落として午睡。
 夕刻起き、昼間に録画したプロ野球中継を見る。タイガースが完封リレーのお返しをして今季初勝利。これで次節からは落ち着いてプレーできそう。
 さあ、明日からは新年度の始まり。気分一新といけたらええなあ。
 福田和代「ディープフェイク」(PHP文芸文庫)読了。荒れた生徒への夜回りをしたりいじめられた生徒がいじめた相手を刺そうとするのを体で受け止めたりしたことで雑誌記事にとりあげられた中学校教師の湯川は、そのためにテレビのレギュラー番組を持つほどになっていたが、ゴシップ誌に覚えのない女子生徒との交際疑惑を書かれたり、ネットで体罰をしているフェイク動画をあげられたりしたことで、社会的にも職場内でもバッシングを受ける。自宅にも入れずビジネスホテルに宿泊。娘は自殺未遂。交際相手とされた生徒は行方不明と四面楚歌に陥った湯川だが、弁護士や彼を信じる人々の協力を得て、自分を陥れた者を突き止めようとする……という話。ミステリ的には犯人像が弱く、ガセネタをつかまされたゴシップ誌の記者の人物造形の浅さなど気になる点はある。それでも本書が面白いのは、動画の捏造や証言のでっちあげなど、AIを悪用すれば、一人の人間の社会的信用など簡単に失わせることができるということをこれでもかこれでもかと読み手につきつけるからやろう。また、主人公がどうやって彼を陥れようとした犯人を突き止めていくのか、あくまで彼の知る範囲のことだけに絞って描いているというところやと思う。特に、一気に奈落の底に突き落とされた主人公の描写など、もし自分がそういう目に遭うたらどうするやろうと考えさせるところなどが秀逸。それだけに、犯人たちの人物像が弱いのがよけいに気になってしまう。とはいえ、読み出したら止まらなんだのは確か。現代の病巣をえぐり出し、被害者がどのように対抗すべきかを示唆するところなど、読みどころの多い一冊でした。

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白光 [読書全般]

 今日は午前中はテレビを見たあと、読みかけの文庫を読了。昼食後、出かける。
 私の高校1年の時の担任で、教育実習の時もホームルームの担当で指導していただいた恩師の墓参。その時のクラスメイトが10人ほど集まり、知恩院にあるお墓へ。その後、祇園のアイリッシュバーでビールを飲みながら歓談。もう数十年ぶりにあうというような顔もあり、それぞれが年相応に老けこみながらも近況報告をしたりして、非常に楽しいひとときを過ごす。次にこの同じメンバーで集まれるかどうかはわからない。なにしろ米国在住の人もいれば愛知在住の人もいる。40数年もたてば、そうなるのです。
 夜の飲み会には欠席して阪急の特急で帰阪。帰宅後、昼間に録画しておいたタイガースの試合を見る。2試合連続完封負け。オープン戦でついた負け癖がそのまま続いているのか。
 夕食後、読みかけの文庫を読んだりする。
 朝井まかて「白光」(文春文庫)読了。明治の初めに画家を夢見てロシア正教会に入信し、ロシアに渡ってイコンを描く修行と、エルミタージュ美術館で西洋画の模写を続け、帰国後も日本人唯一のイコン画家として描き続けた女性、山下りんを主人公にした力作。自らが求める西洋画の勉強とイコンの模写をさせられる修行との差に苦しんだり、帰国後は日露戦争やロシア革命などのために周囲から敵視されるなど歴史の波に翻弄されながらも、ただひたすら絵筆をとり続け、白内障で筆を置いたのちは軍国主義に流れていく世の中とは縁を切った隠居生活を送る。そこにはただただ「絵を描きたい」という一途な思いがあっただけという、山下りんの人生を貫く太い芯があるのみ。悩みもし、喜びもあり、苦しみも味わいと数奇な人生ではありながら、時代の名に流されることのない信念を持ち続けた女性なのです。作者はこういう歴史の表舞台には登場しないが、自分の思いを貫いた女性をうまく見つけ出し、生き生きとその生涯を再現したものが多く、その人物を選ぶ鑑識眼の確かさには目を見張らせる。さらに、その主人公の視点で書くことにぶれがない。なので、よけいにその主人公の生き方が鮮烈に映る。絵を描くことが信仰につながっていった山下りんの生き方は、特に強烈である。イコンという特殊な絵画を主として描いていたため、彼女の作品といえるものは残っているのかどうかはよくわからないけれど、その存在は本作によって長く残っていくに違いない。

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