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八つ墓村 [読書全般]

 先日BSで放送された映画「八つ墓村」(野村芳太郎監督版・金田一耕助は渥美清)を30数年ぶりに見て、原作を読み返してみたくなった。横溝正史「八つ墓村」(角川文庫)であります。本棚を探して発掘し、昨日から通勤時に読む。今日、帰宅してからも読みふけり、読了。中学時代に読んで以来やけれど、けっこう細部まで覚えていたのには驚いた。十代の脳細胞というのはものすごくよく働いているんやなあ。
 映画の方は、劇場で見たときほどおどろおどろしくなく、むしろあっさり目に感じられた。劇場で見たのとテレビで見ているのとの違いはあるか。原作よりも過去との因縁を強調し、本格ミステリの面白さを意識的に消している感じがした。脚本の橋本忍さんは本格ミステリが苦手やったということなんやろう。同じ監督と脚本のコンビである「砂の器」も原作では割とさらりと書き流してあったハンセン病差別の部分をメインで描き、謎解きはそれほど重視してなんだものね。
 原作を読み直して、やはりおっさんにならんとわからんところが多々あったなあと実感。特に男女関係のあやというものはさすがに30数年前にはわからなんだはずですわ。特におぼこい女性として登場した典子が、主人公に恋をすることによって一気に女として開花する様子なんて、鮮やか過ぎるくらい。逆に美也子という女性はいま読み返すとそれほど悪女という感じがしなくて、これは意外やったなあ。小川真由美が演じた映画の美也子のイメージに引きずられ過ぎてたかな。市川崑監督版の「八つ墓村」(金田一耕助は豊川悦司)も見たくなってきたぞ。
 というわけで、もう少し昔読んだ横溝作品を読み返してみたくなり、今度は「犬神家の一族」を引っ張り出してきました。手をつけてへん新刊もあるというのに、なんとしたものか。
 そうそう、当時の文庫カバー絵は杉本一文さんのおどろおどろしいもので、この絵で横溝作品のイメージがすりこまれたというのはあるなあ。カバー絵ほど気持ち悪くないぞ。今のあっさりしたカバーの方が先入観なしに読めてええかもしれんね。

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