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ベルリン1919 赤い水兵 [読書全般]

 3連休をはさんで、入試採点の続き。3日も空くと何やら勝手が違う。こういうのは連日で一気にやってしまわんと勢いがつかんのは、私だけやなかったようです。他の同僚も最初はスローペース。しばらくしたら調子が上がってきたけれどね。
 一所懸命採点をしている間に、事務室には学生支援機構から遅れていた生徒の奨学金採否通知が届いていた。これで一応全員分なんとか届いた。あとは次に3年生が登校する時に渡すだけ。やっとこさ私の一番大きな仕事にけりがついた。
 本日予定されていた採点業務は無事終わり、定時に退散。帰宅後は少しばかり読書。夕食後は昨夜録画した「池上彰の昭和の総理」(正式タイトルはもう少し長かったかな)を妻とともに見る。笑福亭鶴瓶師匠が吉田茂に扮するドラマの宣伝も兼ねた番組で、吉田総理以外には岸信介、佐藤栄作、田中角栄だけをピックアップしてその当時の世相とからめながら池上さんが解説。ドラマの宣伝部分が多く、戦後の総理では東久爾宮稔彦、幣原喜重郎、片山哲、芦田均、鳩山一郎、石橋湛山、池田勇人、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘、竹下登が完全にカットされてしもうた。あ、中曽根だけは葬儀についてのみちょっと触れられた。吉田茂なら吉田茂だけをじっくりとりあげるべし、やったと思うなあ。いささか中途半端でしたね。
 クラウス・コルドン/酒寄進一・訳「ベルリン1919 赤い水兵 上・下」(岩波少年文庫)読了。第一次大戦末期のベルリンを舞台に、皇帝の追放、戦後処理内閣の発足と労働者による革命の挫折と内戦を、少年の視点から描く。主人公のヘレの父親は第一次大戦にかりだされ、片腕をなくして帰ってくる。両親とも戦争を起こした皇帝派の政府に対する革命運動に身を投じる。ヘレは妹のマルタと幼い弟のハンスぼうやの世話をしながら、自分もまた革命勢力の水兵たちの手伝いをしたりするようになる。しかし、労働者の代表だったはずのエーベルト首相は皇帝派の軍人や官僚たちの傀儡と化し、ヘレの両親や水兵たちに武力弾圧をしかけてくる。失敗に終わった十一月革命を舞台に、少年の目に映った大人たちの愚かさを生き生きと描き出す。権力を笠にきて体罰を繰り返す教師と、革命を支持する若い教師の対立、労咳に苦しめられている隣家の少女との淡い初恋、栄養失調に苦しめられる日々など、様々な出来事を通じてヘレは理不尽な権力の圧政や同朋が殺し合うむなしさなどを身をもって感じ取っていく。児童書という形はとっているけれど、私のようなおっさんが読んでも十分面白い。身を守るために嘘をついたことを悔いたり、大切な友人に勘違いで裏切り者と決めつけてしまったり、ヘレはその度に傷つきながらもたくましくなっていく。本書は「ベルリン3部作」の第1部。このあと、ナチスの台頭、そして第二次大戦での敗北が、ヘレの弟や子どもの視点で描かれていくという。歴史の知られざる一面を虚実織り交ぜて描きだすこのシリーズ、続巻が非常に楽しみ。人間の、そして戦争の愚かさを臨場感あふれるタッチで描き、いろいろなことを考えさせてくれる秀作であります。

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