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宇野功芳の死 [追悼]

 愛すれどTigers「マリーンズに3タテされ5連敗」を更新しました。

クラシック音楽の評論家で自ら指揮もした宇野功芳さんの訃報 に接する。享年86。死因は老衰。
 クラシックに関心のない方は全くご存じないやろうけれど、「レコード芸術」や「音楽現代」などの新譜評、そして講談社現代新書や文春新書などでは初心者向けのクラシック案内本を多数出していて、クラシックファンにとっては一種カリスマ的な人気のある人やったのです。
 なんというか「功芳はしか」とでもいうのかな。ずばずばと断言する筆致にひかれて、宇野さんのほめるCDをとにかく聞きまくるという時期があるのですね。私も20代は「功芳はしか」にかかった口で、フルトヴェングラー、ワルター、クナッパーツブッシュ、シューリヒトなどの演奏をよく聴いたものです。カラヤンはお嫌いで、宇野さんの手にかかると他の評論家が絶賛する演奏もただ美しく磨かれただけの凡演ということになってしまう。また、トスカニーニ、セル、ショルティなどの無駄をそぎ落としたような演奏をする指揮者も全く評価してなかった。ピアニストではハイドシェックという忘れ去られていた人を大絶賛し、ブレンデルやポリーニのような情感を表に出さないピアニストには冷たかったなあ。
 そう、情感あふれる演奏、または超個性的な演奏がお好みやったのですね。ご自分が指揮しはったベートーヴェンの交響曲など、好き放題な演奏やった。
 ただ、国内ではあまり評価されてなんだ朝比奈隆さんの再評価など、他の評論家がレコード会社の宣伝に乗っかったような評を書くのに対抗し、自分がええと思うた演奏家をとにかく少しでも多くのファンに認めさせようという熱意は素晴らしかったと思う。
 宇野さんは生前よく「批評は直感」と書いてはったけれど、これは私が書評を書く上で一つの指針になった。まず一読「面白かった!」という感覚を大切にし、そのあとで「なんで面白かったのか」を掘り下げるように心掛けるようになった。
 クラシックの楽しみ方のひとつのあり方を教えられ、そして批評というものの本質的なところを学ばせてもろうた。お手本であり、反面教師でもあった。いろいろな意味で影響を受けた批評家やったといえるかもしれん。そして、批評家が実演をするという非常に危ない賭けをしはったのにも刺激を受けた。批評家が実作することを恐れてはいかんと勇気づけられた。
 謹んで哀悼の意を表します。

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